悪童屋さん依頼SS
言霊と言うものがある。
言霊。文字通り「『言』に宿る『霊』」の意である。
この言霊と言うものは扱いの大変難しいものである。
使い方を間違えれば間違いなく相手の気分を害し、時に残酷に傷つける代物だが、使い方さえ誤らなければ、相手に対し、希望の光を与えるものである。
これは、大事にしまっていた言霊を、使うまでの閑話である。
/*/
悪童屋は執務室にいた。
砂漠の風は、熱を含んで暑い。
窓から吹く熱を帯びた風を受けながら、一心に仕事をしていた。
いつものように、下から上がってくる業務連絡に目を通し、確認をし、検閲印を押し、間違っているものは指摘して下に返す。
いつものように、その作業に没頭していた。
この所、スイトピーとは連絡が取れていなかった。
悪童屋にとって、彼女は何者にも変えられない大切な存在だった。
彼女の若さが眩しかった。
自分とは違う目で見る世界が眩しかった。
彼女の笑顔が眩しかった。
逢いたい。
しかし……。
「よろしいのですか?」
よっきーが悪童屋の印の押した書類を集めて整理しながら、心配そうに言った。
「何がだ?」
「スイトピー様の事です。この所ずっと執務室で仕事に没頭されて、連絡が取れていないように思えるのですが」
悪童屋は作業を止めなかった。
「分かっている」
「なら、どうして行かないのですか?」
悪童屋は、いつものように一瞬深く考えた後、笑みを浮かべた。
「スイトピーが大事だから、余計に仕事に手を抜けないのだよ」
「と、おっしゃるのは?」
「俺は彼女にとって、大事な「おじさま」でいないといけない。仕事を疎かにし、国民を路頭に迷わせるような事になったら、それこそスイトピーに合わせる顔がなくなる。それに、もうすぐ……」
「? 藩王?」
「……何、すぐ分かる」
悪童屋はそれだけ言うと、視線を書類に戻した。
よっきーは釈然としない顔を浮かべたが、「手が遅れている」と言う悪童屋の指摘に慌てて書類に舞い戻った。
/*/
「俺と一緒に暮らさないか?」
大事にしまっていたその言葉を告げる為に。
俺は彼女に相応しい人間になろう。
悪童屋は、次に赴くその時の事を考えていた。
彼女に次に逢えるその時の時間が、1秒でも早くなると信じて、悪童屋は作業を終えた。
「仮眠してくる。10分経ったら起こしてくれ」
その言葉の元で、彼女の青空の下の笑顔を見るのは、これから12時間も先の事である。
言霊。文字通り「『言』に宿る『霊』」の意である。
この言霊と言うものは扱いの大変難しいものである。
使い方を間違えれば間違いなく相手の気分を害し、時に残酷に傷つける代物だが、使い方さえ誤らなければ、相手に対し、希望の光を与えるものである。
これは、大事にしまっていた言霊を、使うまでの閑話である。
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悪童屋は執務室にいた。
砂漠の風は、熱を含んで暑い。
窓から吹く熱を帯びた風を受けながら、一心に仕事をしていた。
いつものように、下から上がってくる業務連絡に目を通し、確認をし、検閲印を押し、間違っているものは指摘して下に返す。
いつものように、その作業に没頭していた。
この所、スイトピーとは連絡が取れていなかった。
悪童屋にとって、彼女は何者にも変えられない大切な存在だった。
彼女の若さが眩しかった。
自分とは違う目で見る世界が眩しかった。
彼女の笑顔が眩しかった。
逢いたい。
しかし……。
「よろしいのですか?」
よっきーが悪童屋の印の押した書類を集めて整理しながら、心配そうに言った。
「何がだ?」
「スイトピー様の事です。この所ずっと執務室で仕事に没頭されて、連絡が取れていないように思えるのですが」
悪童屋は作業を止めなかった。
「分かっている」
「なら、どうして行かないのですか?」
悪童屋は、いつものように一瞬深く考えた後、笑みを浮かべた。
「スイトピーが大事だから、余計に仕事に手を抜けないのだよ」
「と、おっしゃるのは?」
「俺は彼女にとって、大事な「おじさま」でいないといけない。仕事を疎かにし、国民を路頭に迷わせるような事になったら、それこそスイトピーに合わせる顔がなくなる。それに、もうすぐ……」
「? 藩王?」
「……何、すぐ分かる」
悪童屋はそれだけ言うと、視線を書類に戻した。
よっきーは釈然としない顔を浮かべたが、「手が遅れている」と言う悪童屋の指摘に慌てて書類に舞い戻った。
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「俺と一緒に暮らさないか?」
大事にしまっていたその言葉を告げる為に。
俺は彼女に相応しい人間になろう。
悪童屋は、次に赴くその時の事を考えていた。
彼女に次に逢えるその時の時間が、1秒でも早くなると信じて、悪童屋は作業を終えた。
「仮眠してくる。10分経ったら起こしてくれ」
その言葉の元で、彼女の青空の下の笑顔を見るのは、これから12時間も先の事である。
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