結城杏さん依頼SS2
どうしてこんな事になったのか私にはわかりません。
これを読んだあなた、どうか真相を暴いてください。
それだけが私の望みです。
……どっかで聞いた事あるくだりだって?
イヤダナアソンナコトナイデスヨ?
――――みはえる摂政業務日記より一部抜粋――――
その日は晴天。
見事なまでの小笠原日和です。
杏さんの連れて来たスキピオがにゃーんと鳴きながらしっぽをぴんと立てて歩いています。
スキピオもこの見事なまでの小笠原日和が嬉しいのでしょう。
私達は、今日はこうして小笠原に慰安旅行に来たのです。
いやはや、こんなに嬉しい事があるでしょうか。
日頃の責務から解放された我々は、銘々に好きな場所に移動し始めました。
「いやあ、猫はいいねえ」
……結城由羅藩王は早速パラソルの下に潜ってビールを飲み始めました。
「女王様、おつまみも一緒に食べないと胃に悪いですよ。それに、飲んでから泳いじゃ駄目ですからね?」
「 にゃ! へーか飲みすぎ注意ですよー? 飲みすぎたら病院長が…」
怜夜さんと杏さんがたしなめます。
いやはや、何とも藩王らしいと言うか何と言うか。
「え、ダメなの?」
藩王は浮き袋を腰につけてすねています。
すねても駄目なものは駄目です。
ここは我慢してもらいましょう。
………しかしすねてビールを飲み始めたせいでしょうか。
ビール缶が10、11、12………。
……藩王、飲み過ぎです。
藩王が暴飲を繰り返している中、青様が我々の為にバーベキューを用意して下さっています。
おや、これは手伝わなくては……。
「あんまり人数はいらないよ。ほら、遊んでおいで」
青は笑顔で言います。
ガーン。
……とりあえず、私はお邪魔なようなので、藩王の横でビールを飲み始めました。
藩王は、いい感じに出来上がっています。
「人数も揃ってるし、スイカ割りとか、普通にできそうですよねー」
りんくさんが楽しそうに戌人さんと話しています。
そうですねえ、海と言えばスイカ割り、なんとも風流……。
「すいかー」
突然出来上がった藩王が私を叩き始めました。
ゲフッゲフッ。
「んー? あー、どおりで音がイマイチだと…わっはっは」
わっはっはではありません。
私は殴られ続け、そのまま気絶をしてしまいました……。
/証言1:緋乃江戌人/
「人数も揃ってるし、スイカ割りとか、普通にできそうですよねー」
「そんなこともあろうかと」
自分はそう言いながらりんくさんとスイカ割りをしようと木刀を出していたんです。
そしたら藩王、みはえるさんをボコボコ叩いていたんです。
みはえるさん、そりゃあもう白目剥いて気絶してしまい、そのまま海に流されてしまったんです。
「みはるさんが流された!!」
「ああもう、みはえる摂政! 流される前に準備運動を!」
カヲリさんとみなおさんがそう叫んでいる間にもみはえるさんはどんぶらこ、どんぶらこ、スイカから生まれたすいか太郎……まあそれはどうでもいいとして、とにかく沖まで流されてしまったんです。そりゃあもう、びっくりしましたよ。
で、慌てて上着脱いで飛び込んだんです。
「戌人さ―――ん。私、泳げないけど蘇生判定はできるので、とりあえず全力でこっちにたどり着いてくださ――い」
幸いな事に医師アイドレス着ていた怜夜姉さんがいたので、万が一死んでも一応は安心と。まあ死なないに越した事はないので急いでみはえるさん担いで泳いできました。
「やあいぬひとくん、おがさわらはおもっていたよりすずしいねえ。つめたいくらいだ」
「……流石に酔っ払って準備運動もなしに波に流されれば冷たいかと。僕でも、冷たいくらいですからね」
意思確認は一応OK。
このままみはえるさん担いで岸まで泳いでいきました。
「姉さんとみなおさん! 僕のバックの中に色々入ってますから、漁ってみてくださいっ」
岸に着いたらすぐ姉さんとみなおさんに漁りました。
よしこれでタオルで拭けば……。
「あ、戌人さんの日記帳、発見!」
「? 何でぬいぐるみ……?」
って、何プライベートグッズ漁ってるの二人とも!?
「……って、御二方、そっちのバッグじゃなくてっ。特に姉さんその日記は駄目ですっ!!」
思わずそのまま両手でバタバタつっこみを入れてしまったら……。
ベシャッ
『あ。』
みはえるさんはそのまま頭を砂につっこんでいました。
………あの時はどうもすみませんでした。
/証言2:環月怜夜/
バカンスとは常に気が緩むものです。
青い空、青い海。
何よりも。
ロジャー様が存在するその時点で気が緩むと言うものです。
何事も程ほどが大切です。
ですから。
「女王様、おつまみも一緒に食べないと胃に悪いですよ。それに、飲んでから泳いじゃ駄目ですからね?」
ビール缶をあちらこちらに放り投げて海に向かおうとする女王に一言言っておきました。
「え、ダメなの?」
「年間何人も、飲んでから海に入って死亡しているでしょうが!!」
女王はぶーたれてまたがばがばとビールを飲み始めました。
……本当に、どうしましょう、この人。
私はとりあえず酔っ払って海で溺死しないだけよしとしようと思い、ゴミ拾いを始めました。
海辺は貝殻やキレイなガラスが落ちているのでゴミ拾いも楽しいです。
その時。
「みはえるさんが流された!!」
「ああもう、みはえる摂政! 流される前に準備運動を!」
みはえるさんが沖に流されていました。
もう、この酔っ払いが!!
慌てて戌人さんが救助に行きました。
「戌人さ―――ん。私、泳げないけど蘇生判定はできるので、とりあえず全力でこっちにたどり着いてくださ――い」
「姉さんとみなおさん!僕のバックの中に色々入ってますから、漁ってみてくださいっ」
戌人さんが立ち泳ぎしながらこう返してきたので、とりあえずタオルを探すことにしました。
あっ、日記発見。
みなおさんはぬいぐるみをみつけました。
何で戌人さんは小笠原旅行にこんなもの持って来ているのでしょう。ミステリー。
まあそんな事はどうでもよく、私とみなおさんはタオルと国指定水着を用意しました。
うん、女王様とみはえるさん。禁酒1ヶ月の刑に。
そう心に決めましたよ。騎士団長権限を持って。
まあ水着に着替えた後は素直にみなおさんに怪我を治されていましたがね。みはえるさんは。
/証言3:カヲリ/
いやあ。暑かったですねえ。あの日は。
着いて早々杏さんとスキピオが仲良し仲良ししているので嬉しくなってスケッチブック出して絵を描きましてね。
あの日は皆幸せオーラ全開でしたね。青さんと舞さんも仲睦ましくバーベキューの用意なんかしてたりして、さあて泳ごうとしましたら……。
「みはえるさんが流された!!」
思わず叫びましたよ。で、準備体操するの忘れて飛び込みましたよ。はい。
でもまあ、戌人さんが先にみはえるさん助けちゃいましたがね。いや、反応早かったです。
「カヲリさーん、大丈夫ですかー?」
「あ、はい、え~と、問題なしです~」
まあ戌人さんが助けてくれたので問題なしかぁ、とそのままぷかぷか泳いでました。
小笠原の海はきれいだなあ。
まあそうぷかぷか浮かんでたんですよ。
「カヲリさーん。みはえるさんが其方の方に行きましたから、御願いしますねーっ」
「は~い。」
戌人さんに言われてみはえるさん来るかなあと見てたら。
いきなり沈みました。
「ギャー、みっ、みはえるさん!?」
びっくりして潜ってみますが見つかりません。
息が続かなくなったので仕方なく水面に出たら。
「びっくりしました?」
みはえるさん酒臭い。
けどさっきまでボロボロだった割りには元気でしたね。
「溺れたのかと思いましたよ、みはえるさん~」
「さっきは飛び込んでくれてありがとう。そろそろバーベキューの支度が出来るようだから、行きましょう」
みはえるさんは上機嫌のようでした。
うーん、心配ばっかりさせて。
ま、いっか。
そのまま私達はバーベキューに行かせてもらいました。
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「みはえるさん、何やってるんですか?」
「やあ戌人君」
「何書いてるんですか?」
「いやねえ、最近ミステリー物に凝っててねえ。ネタとしてこの間の小笠原旅行の日記からネタを探していたんだよ。海辺で起こった惨劇に挑む、名付けて「摂政のなく頃に」って。でもなかなか新鮮なネタがみつからないよねえ」
「……明らかにパクリ臭いので辞めて下さい」
平和な小笠原を舞台に次々と主に摂政に起こる惨劇に挑め!!
「摂政のなく頃に」
現在好調執筆中!!
……なのかもしれない。
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