№1006 鈴藤 瑞樹@詩歌藩国さん依頼SS
白い国にて寄り添い合って
詩歌藩国。
北国人の国であり、冬は-5度でいつもより暖かいと言う、そんな国である。
誰もが寄り添い合わないと生きてはいけない厳しい冬の町を、1組のカップルが仲良く歩いていた。
「温泉♪ 温泉♪」
女性の方はやや小柄と言うよりは完全に小柄であり、女性と言うよりは少女と言った方が相応しい出で立ちをしていた。
もこもことしたコートを着て、頭を覆ったフードからは詩歌藩国では珍しい黒い髪が覗いていた。
そんな彼女は寒さで頬を赤らめつつも、元気に腕を振って鼻歌を歌いながら歩いていた。
「カレンさんこっちですよー、こっち」
男性の方は、完全に北国人と言った出で立ちで、小柄な彼女より半歩だけ先を進んで歩いていた。身長はすごく高くもないがすごく低くもない。ただ小柄な彼女よりは確実に高いので、歩幅を緩めながら、振り返り振り返り歩いていた。
本当は手を繋ぎたい所だけど、カレンさんきっと怒るもんなあ。
またポカポカポカと叩くか、ハリセンで「ミソッカスゥゥー!!」としばくか。あれ、それも何かいい気がしてきたぞ。いいな、それ。
何て事を考えていたら、男性改め鈴藤瑞樹のオーラで妄想を読んだのかどうかは知らないが、彼女改めカレン・オレンジピールはじと目で鈴藤の事を見ている事に気付いた。もっとも、目は閉じているので、じと目ではないのだが、それらしいオーラを滲ませていた。
「なっ、何ですか?」
ドキリとする。
カレンはまだ、じっとりオーラを鈴藤に向けている。
「変なコトを考えていまシタネ?」
「いやいやいやいや、滅相もない!!」
「知っていまスカ? 嘘つきは泥棒の始まりなんデスヨ?」
カレン、じっとりオーラ。
鈴藤は考える。
ここで殴られるのは、確かにおいしいけれど、今はデート中。
このままカレンさんが怒って帰ってしまっては、よくない事が起こるような気がする……。
ここは誤魔化すか? いやいや、カレンさんは既に嘘だと見破っているし……。
素直に謝る? いや、どっちみち殴られる。おいしい。でも駄目だろ……。
鈴藤は某命のやり取りを行うノートの持ち主か、はたまた某因習に満ちた村の分校の部活かと言うべき思考のフル回転を行うが、やがて「チン」と言う音で思考を収束させる。
素直に謝ろう。
殴られる事に変わらないのならば、謝って殴られよう。
また何かに巻き込まれてしまう前に。
「すみませんっっ!!」
鈴藤は90度に腰を曲げて頭を下げた。
カレンはきょとん。と言う擬音を付けて鈴藤に顔を向ける。
「いやあ、ただ単に、温泉の前に手を繋いで歩けたらいいなあとか、何とか思っただけです。すみません。やましい事はないです……ちょびっとだけしか」
「…………」
カレンはじっとりオーラを滲ませたまま、唇に手を当てて考え込み始めた。
あっ、あれっ? ここはすぐ「何ですかソレ」と呆れるかハリセンでツッコミを入れる所では?
カレンが少し俯いて考え出したのに、鈴藤は途端にあせあせとした様子でカレンに近寄った。
「あの、カレンさん?」
「……要は手を繋ぎたいって事でいいデスカ?」
「はい?」
「繋ぎたくないんデスカ?」
「えっ……えっと……はい、お願いします」
「よし。ちゃんとしたい事があったら口で言うデス」
カレンは照れる事もなく、手を差し出した。
鈴藤は、おずおずと自分よりも一回りほど小さな手に手を伸ばし、それをきゅっと握った。
手袋越しとは言えど、気のせいか暖かくなったような気がする。
「よし。えらいえらい」
カレンはにこっと口角を上げて、手を握り返す。
「さあ、早く行きますヨ。温泉おんせーん」
「あっはい!!」
2人は寄り添い合って、そのまま温泉へと歩き始めた。
ちろちろと降り続く雪は止む事を知らないようだが、2人の周りは気のせいかぽかぽかとしていた。
詩歌藩国。
誰もが寄り添い合わないと生きてはいけない厳しい冬の国を、1組のカップルが仲良く歩いていた。
詩歌藩国。
北国人の国であり、冬は-5度でいつもより暖かいと言う、そんな国である。
誰もが寄り添い合わないと生きてはいけない厳しい冬の町を、1組のカップルが仲良く歩いていた。
「温泉♪ 温泉♪」
女性の方はやや小柄と言うよりは完全に小柄であり、女性と言うよりは少女と言った方が相応しい出で立ちをしていた。
もこもことしたコートを着て、頭を覆ったフードからは詩歌藩国では珍しい黒い髪が覗いていた。
そんな彼女は寒さで頬を赤らめつつも、元気に腕を振って鼻歌を歌いながら歩いていた。
「カレンさんこっちですよー、こっち」
男性の方は、完全に北国人と言った出で立ちで、小柄な彼女より半歩だけ先を進んで歩いていた。身長はすごく高くもないがすごく低くもない。ただ小柄な彼女よりは確実に高いので、歩幅を緩めながら、振り返り振り返り歩いていた。
本当は手を繋ぎたい所だけど、カレンさんきっと怒るもんなあ。
またポカポカポカと叩くか、ハリセンで「ミソッカスゥゥー!!」としばくか。あれ、それも何かいい気がしてきたぞ。いいな、それ。
何て事を考えていたら、男性改め鈴藤瑞樹のオーラで妄想を読んだのかどうかは知らないが、彼女改めカレン・オレンジピールはじと目で鈴藤の事を見ている事に気付いた。もっとも、目は閉じているので、じと目ではないのだが、それらしいオーラを滲ませていた。
「なっ、何ですか?」
ドキリとする。
カレンはまだ、じっとりオーラを鈴藤に向けている。
「変なコトを考えていまシタネ?」
「いやいやいやいや、滅相もない!!」
「知っていまスカ? 嘘つきは泥棒の始まりなんデスヨ?」
カレン、じっとりオーラ。
鈴藤は考える。
ここで殴られるのは、確かにおいしいけれど、今はデート中。
このままカレンさんが怒って帰ってしまっては、よくない事が起こるような気がする……。
ここは誤魔化すか? いやいや、カレンさんは既に嘘だと見破っているし……。
素直に謝る? いや、どっちみち殴られる。おいしい。でも駄目だろ……。
鈴藤は某命のやり取りを行うノートの持ち主か、はたまた某因習に満ちた村の分校の部活かと言うべき思考のフル回転を行うが、やがて「チン」と言う音で思考を収束させる。
素直に謝ろう。
殴られる事に変わらないのならば、謝って殴られよう。
また何かに巻き込まれてしまう前に。
「すみませんっっ!!」
鈴藤は90度に腰を曲げて頭を下げた。
カレンはきょとん。と言う擬音を付けて鈴藤に顔を向ける。
「いやあ、ただ単に、温泉の前に手を繋いで歩けたらいいなあとか、何とか思っただけです。すみません。やましい事はないです……ちょびっとだけしか」
「…………」
カレンはじっとりオーラを滲ませたまま、唇に手を当てて考え込み始めた。
あっ、あれっ? ここはすぐ「何ですかソレ」と呆れるかハリセンでツッコミを入れる所では?
カレンが少し俯いて考え出したのに、鈴藤は途端にあせあせとした様子でカレンに近寄った。
「あの、カレンさん?」
「……要は手を繋ぎたいって事でいいデスカ?」
「はい?」
「繋ぎたくないんデスカ?」
「えっ……えっと……はい、お願いします」
「よし。ちゃんとしたい事があったら口で言うデス」
カレンは照れる事もなく、手を差し出した。
鈴藤は、おずおずと自分よりも一回りほど小さな手に手を伸ばし、それをきゅっと握った。
手袋越しとは言えど、気のせいか暖かくなったような気がする。
「よし。えらいえらい」
カレンはにこっと口角を上げて、手を握り返す。
「さあ、早く行きますヨ。温泉おんせーん」
「あっはい!!」
2人は寄り添い合って、そのまま温泉へと歩き始めた。
ちろちろと降り続く雪は止む事を知らないようだが、2人の周りは気のせいかぽかぽかとしていた。
詩歌藩国。
誰もが寄り添い合わないと生きてはいけない厳しい冬の国を、1組のカップルが仲良く歩いていた。
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