芹沢琴@FEGさん依頼SS
そして桜が舞う頃に
明乃は空を見上げていた。
空は摩天楼。たくさんのビルが木々のように建ち並んでいる。
そして、桜。琴から初めて聞いた時には「さくらですか?」と聞き返したものだ。
桜の淡いパステルピンク色の花びらが舞っていた。
明乃のよく知る桜は山でよく見られる白いものか、ぼたん桜であり、こんなに桜がキレイなものとは知らなかった。
「明乃ちゃん、ここがうちの国の桜並木ですよ。……もっとも、私も今日初めて来ました」
琴は何故かいばっている。
「キレイですねえ……」
「そうですわねえ。もう春も終わりですから、もうそろそろ見納めですかねえ。少なくともうちでは」
「うちでは?」
「はい。宰相府……ええっと前行った神社とは別の所なんですけどね……では1年中桜が見られる区画があると聞き及んでおります」
「はあ……まるで魔法ですね」
「あらあら。そう言えばそうかもしれませんわねえ。あまり考えた事ありませんでしたが」
琴はのほほんと笑う。
しかし不思議な事に、さっきまでコゼット……この国のお姫様らしい……の周りではお茶やケーキを食べていたのに、今は酒や肉の匂いがする。
あちこちで人が敷物をひいて座り、それらを食している。
明乃はびっくりしたような顔で見ていて、琴は「ああ」と納得した。
最初は彼女との文化の違いにびっくりし通しだった琴だが、最近になってようやく異文化交流について慣れてきた所だ。
「あれは、お花見です」
「おはなみ?」
「桜が咲いたら花見をするのです」
「他の花では駄目なんですか?」
「ええとですねえ。桜はうちの国の藩王様が好きな花なんですよ。で、国民もその花が大好きなんで。だから、その花が咲いたら皆で花を見ながらお酒を飲もうとするのです」
「はあ……宴会ですか?」
「そうですわねえ。でもお弁当食べたりお菓子も食べますよ。夜桜なんかも見上げたりするようです」
「そうですか」
明乃はもう一度桜を見上げた。
パステルピンクの花びらが1枚ひらひらと落ちてきた。
思わず手を伸ばすと、それは明乃の手の中に入った。
柔らかく小さい、白い花びらだ。
明乃は「?」とした。
「ピンク色だと思ったのに、花びらは白いんですね」
「あら、そう言えばそうですわね。何故でしょうか。桜って木に咲いてる時はピンク色ですのに、落ちた花びらは白いんです。皆で咲いてるからピンク色なんですかねえ」
琴は「ムムム」と眉間に皺を寄せて考え込み始めた。
明乃は笑った。
「あっ、そうだ」
「はい?」
琴は思いついたように手をポンと叩いた。
「今年はもうおしまいですが、来年になったらお花見をしましょう。私お酒は飲めませんが、何か食べ物お持ちしますわ」
「あっ、でしたら、私も持ってきます」
「ですか。では約束ですね」
「はい、約束です」
2人はにこっと笑った。
桜の花びらが舞った。
桜の花言葉
想いを託します
<了>
明乃は空を見上げていた。
空は摩天楼。たくさんのビルが木々のように建ち並んでいる。
そして、桜。琴から初めて聞いた時には「さくらですか?」と聞き返したものだ。
桜の淡いパステルピンク色の花びらが舞っていた。
明乃のよく知る桜は山でよく見られる白いものか、ぼたん桜であり、こんなに桜がキレイなものとは知らなかった。
「明乃ちゃん、ここがうちの国の桜並木ですよ。……もっとも、私も今日初めて来ました」
琴は何故かいばっている。
「キレイですねえ……」
「そうですわねえ。もう春も終わりですから、もうそろそろ見納めですかねえ。少なくともうちでは」
「うちでは?」
「はい。宰相府……ええっと前行った神社とは別の所なんですけどね……では1年中桜が見られる区画があると聞き及んでおります」
「はあ……まるで魔法ですね」
「あらあら。そう言えばそうかもしれませんわねえ。あまり考えた事ありませんでしたが」
琴はのほほんと笑う。
しかし不思議な事に、さっきまでコゼット……この国のお姫様らしい……の周りではお茶やケーキを食べていたのに、今は酒や肉の匂いがする。
あちこちで人が敷物をひいて座り、それらを食している。
明乃はびっくりしたような顔で見ていて、琴は「ああ」と納得した。
最初は彼女との文化の違いにびっくりし通しだった琴だが、最近になってようやく異文化交流について慣れてきた所だ。
「あれは、お花見です」
「おはなみ?」
「桜が咲いたら花見をするのです」
「他の花では駄目なんですか?」
「ええとですねえ。桜はうちの国の藩王様が好きな花なんですよ。で、国民もその花が大好きなんで。だから、その花が咲いたら皆で花を見ながらお酒を飲もうとするのです」
「はあ……宴会ですか?」
「そうですわねえ。でもお弁当食べたりお菓子も食べますよ。夜桜なんかも見上げたりするようです」
「そうですか」
明乃はもう一度桜を見上げた。
パステルピンクの花びらが1枚ひらひらと落ちてきた。
思わず手を伸ばすと、それは明乃の手の中に入った。
柔らかく小さい、白い花びらだ。
明乃は「?」とした。
「ピンク色だと思ったのに、花びらは白いんですね」
「あら、そう言えばそうですわね。何故でしょうか。桜って木に咲いてる時はピンク色ですのに、落ちた花びらは白いんです。皆で咲いてるからピンク色なんですかねえ」
琴は「ムムム」と眉間に皺を寄せて考え込み始めた。
明乃は笑った。
「あっ、そうだ」
「はい?」
琴は思いついたように手をポンと叩いた。
「今年はもうおしまいですが、来年になったらお花見をしましょう。私お酒は飲めませんが、何か食べ物お持ちしますわ」
「あっ、でしたら、私も持ってきます」
「ですか。では約束ですね」
「はい、約束です」
2人はにこっと笑った。
桜の花びらが舞った。
桜の花言葉
想いを託します
<了>
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