むつき・荻野・ドラケン@レンジャー連邦さん依頼SS
指輪物語
「一応それも教えて下さい」
店主はおやと思いました。
二人の若い男女は新婚さんらしく、二人は寄り添って指輪を見て回っていました。
店主はしまおうと思っていた指輪を男女に見せました。
「これは旅人が戻るためにつかうものです。帰還のお守りですよ。新婚さんには使い道が……」
それを聞くと奥さんが嬉しそうに旦那さんをこづきました。
「カールが私をおいてか無ければ使わないものだけどね」
『カール』と呼ばれた旦那さんは苦笑しながらも同意しました。
「まあ、パイロットが戻ってくるにはいい指輪かもしれないな」
「私達、パイロットだもんね、いいかもしれない」
二人は嬉しそうに、大事な指輪を「これ」に決めたようです。
店主はおやと思いました。
指輪と言う物は持ち主を選ぶのかと。
パイロットの男女は嬉しそうに「ではそれをくれないか。二つ」と指輪を取りました。
店主は「はあ」と言いつつ、指輪にまつわる話を思い出していました。
/*/
「いつかこの空を飛ぶんだ」
一人の青年がいました。
空を知っているのは魔法使いだけでした。
青年は魔法使いじゃなくても空を飛べる事を証明するため、空飛ぶ事を夢見て日々プロペラをいじる生活をしていました。
「頑張ってね」
青年には恋人がいました。青年がプロペラをいじるのを手伝っている人でした。
青年は恋人に誓いました。
「空を飛べるようになったら、必ず月の石を持ってくるから」
青年は空を飛ぶ事を夢見て、今日もプロペラをいじっていました。
恋人はそんな彼が大好きだったので、それを微笑んでみていました。
産業革命が起こっていたのはこの頃でした。
世界は活気に溢れていました。新しいエネルギー、新しい機械、新しい世界。
魔法使いが魔法を使うように、人はいろんな事ができるようになっていきました。
さて、恋人は魔法使いでした。
恋人は青年が空を飛べるよう願いを込めて、お守りを作る事にしました。
鍋をくべ、呪文を唱えてお守りを作りました。
それはちょうど手の中に入る位の石でした。
「明日、いよいよ飛行実験をするんだ」
青年が言うのを、恋人はにこにこしながら聞いていました。
「お守り。貴方が無事空に飛べますように」
恋人は作ったお守りを渡しました。
お守りはころんとした形のすべすべした手触りの石でした。
青年は笑って石を手に取りました。
青年は石をポケットにしまい、飛行実験に挑む事となりました。
空高く、晴天。
その日は風もなくいい天気でした。
青年は『飛行機』と名付けた機械に乗り込んでいました。
たくさんの観客に見守られ、『飛行機』にはエンジンがかけられました。
飛行機は音を立てて浮かび上がりました。
人々は歓声をあげました。
恋人は涙ぐんで空を見つめていました。
青年は空を飛んでいました。
いつか恋人が箒に乗せて飛んでくれたように、高く高く。
青年の胸ポケットには恋人からのお守りがありました。
帰ってきたら式を挙げよう。青年はそう思いながら、どこまでもどこまでも高く飛んでいきました。
/*/
「いいですよ、これから新生活で何かと入用でしょう? 100マイルなんてもらえません。20マイルでいいですよ」
「本当にそれでいいのか?」
「構いませんよ。どうせこの指輪はアンティークです。もらってくれるならサービスしますよ」
店主は嬉しそうに指輪をはめて歩いていく二人の背中に、不思議な縁を感じていました。
かつて空を夢見た夫婦がはめていたものを、空を飛ぶ夫婦がはめる不思議。
巡り会わせと言う物はあるものだねえ。
店主は煙草をくゆらせて、次の客を待つ事に決めました。
「一応それも教えて下さい」
店主はおやと思いました。
二人の若い男女は新婚さんらしく、二人は寄り添って指輪を見て回っていました。
店主はしまおうと思っていた指輪を男女に見せました。
「これは旅人が戻るためにつかうものです。帰還のお守りですよ。新婚さんには使い道が……」
それを聞くと奥さんが嬉しそうに旦那さんをこづきました。
「カールが私をおいてか無ければ使わないものだけどね」
『カール』と呼ばれた旦那さんは苦笑しながらも同意しました。
「まあ、パイロットが戻ってくるにはいい指輪かもしれないな」
「私達、パイロットだもんね、いいかもしれない」
二人は嬉しそうに、大事な指輪を「これ」に決めたようです。
店主はおやと思いました。
指輪と言う物は持ち主を選ぶのかと。
パイロットの男女は嬉しそうに「ではそれをくれないか。二つ」と指輪を取りました。
店主は「はあ」と言いつつ、指輪にまつわる話を思い出していました。
/*/
「いつかこの空を飛ぶんだ」
一人の青年がいました。
空を知っているのは魔法使いだけでした。
青年は魔法使いじゃなくても空を飛べる事を証明するため、空飛ぶ事を夢見て日々プロペラをいじる生活をしていました。
「頑張ってね」
青年には恋人がいました。青年がプロペラをいじるのを手伝っている人でした。
青年は恋人に誓いました。
「空を飛べるようになったら、必ず月の石を持ってくるから」
青年は空を飛ぶ事を夢見て、今日もプロペラをいじっていました。
恋人はそんな彼が大好きだったので、それを微笑んでみていました。
産業革命が起こっていたのはこの頃でした。
世界は活気に溢れていました。新しいエネルギー、新しい機械、新しい世界。
魔法使いが魔法を使うように、人はいろんな事ができるようになっていきました。
さて、恋人は魔法使いでした。
恋人は青年が空を飛べるよう願いを込めて、お守りを作る事にしました。
鍋をくべ、呪文を唱えてお守りを作りました。
それはちょうど手の中に入る位の石でした。
「明日、いよいよ飛行実験をするんだ」
青年が言うのを、恋人はにこにこしながら聞いていました。
「お守り。貴方が無事空に飛べますように」
恋人は作ったお守りを渡しました。
お守りはころんとした形のすべすべした手触りの石でした。
青年は笑って石を手に取りました。
青年は石をポケットにしまい、飛行実験に挑む事となりました。
空高く、晴天。
その日は風もなくいい天気でした。
青年は『飛行機』と名付けた機械に乗り込んでいました。
たくさんの観客に見守られ、『飛行機』にはエンジンがかけられました。
飛行機は音を立てて浮かび上がりました。
人々は歓声をあげました。
恋人は涙ぐんで空を見つめていました。
青年は空を飛んでいました。
いつか恋人が箒に乗せて飛んでくれたように、高く高く。
青年の胸ポケットには恋人からのお守りがありました。
帰ってきたら式を挙げよう。青年はそう思いながら、どこまでもどこまでも高く飛んでいきました。
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「いいですよ、これから新生活で何かと入用でしょう? 100マイルなんてもらえません。20マイルでいいですよ」
「本当にそれでいいのか?」
「構いませんよ。どうせこの指輪はアンティークです。もらってくれるならサービスしますよ」
店主は嬉しそうに指輪をはめて歩いていく二人の背中に、不思議な縁を感じていました。
かつて空を夢見た夫婦がはめていたものを、空を飛ぶ夫婦がはめる不思議。
巡り会わせと言う物はあるものだねえ。
店主は煙草をくゆらせて、次の客を待つ事に決めました。
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