月光ほろほろ@たけきの藩国さん依頼SS
素直な気持ち
/*/
「美ー味ーいーぞぉぉ――――!!!」
きんつばを頬張って月光ほろほろはそう叫んだ。
ヨーコは面食らった。
いつも自分を褒めてくれるのはお父さんだけだったから。
だから自分を褒めてくれた月光が一緒に出かけようと誘いに来た時も面食らった。
どうすればいいのか分からなかったのである。
自分の習いたてのきんつばを食べて褒めてくれたのだから、何か自分が作ればいいのだろうか?
ヨーコは戸惑いながらも、厨房にこもった。
/*/
知恵者が厨房に入ったのは何となくである。
この前のお見合いから娘の様子がおかしい。
いつもそわそわ落ち着きなさそうにしているのが気になった。
「何をしているか?」
知恵者がヨーコに話しかけたのは、ヨーコが頬を赤らめながらサンドイッチを作っていた時だった。
「お父さん」
知恵者はヨーコの返事に「おや」と思った。
いつもは心底嬉しそうに素直な返事をするのが、今日の声は艶っぽく感じた。
「サンドイッチを作っていました」
厨房はなるほど、いい匂いに包まれていた。
料理が好きなヨーコは、サンドイッチもパンから作るのである。
「誰かへの贈り物か?」
そう知恵者が口に出した瞬間、ヨーコは「ポンッ」っと頬を赤らめた。
湯気を出しているように恥ずかしそうにもじもじした。
「ハイ……です」
「そうか」
知恵者はのんびり言った。
思えばヨーコは小さい頃からお父さん一筋であった。
それがようやく親離れしようとしているのだ。
少々切ない気持ちにはなるが、ここは祝福してやらなければいけない。
知恵者はもじもじしているヨーコに頷くだけ頷いて立ち去っていった。
娘はこれから綺麗になる。今まででも充分綺麗だったが、これからはもっともっと。
知恵者は柄にも合わず、切ない気分になった。
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「で、知恵者はああやって酒を飲んでいると?」
「いや、酒を飲むのはいつもの事だけど、いろいろ複雑らしいよ? 親離れできたヨーコさんのお祝いとか、子離れしなきゃいけない自分の気持ちとか」
アーシュラとマイトの目線の先には、すっかり酒で出来上がった知恵者が、陽気に音楽を奏でる姿があった。
何を言われても、知恵者にとっては娘は大事、娘に祝福をである。
例え酒で出来上がっているという言い訳を除いても、めでたい、祝いたい気持ちは変わらないのである。
そう酒で言い訳しながら、知恵者は陽気に音楽を奏でた。
娘に、イアラに祝福を。
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ヨーコはバスケットに物を詰めていた。
サンドイッチ、ジュース、シート。全部心を込めて準備したものである。
月光の事を思い浮かべた。
またお見合いの時みたいに喜んでくれるだろうか。
ヨーコははにかみながら笑った。月光の事を考えると、不思議と笑みが浮かぶのだ。
ヨーコ自身はまだ気付いていない。
この感情が「恋」だと言う事を。
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「美ー味ーいーぞぉぉ――――!!!」
きんつばを頬張って月光ほろほろはそう叫んだ。
ヨーコは面食らった。
いつも自分を褒めてくれるのはお父さんだけだったから。
だから自分を褒めてくれた月光が一緒に出かけようと誘いに来た時も面食らった。
どうすればいいのか分からなかったのである。
自分の習いたてのきんつばを食べて褒めてくれたのだから、何か自分が作ればいいのだろうか?
ヨーコは戸惑いながらも、厨房にこもった。
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知恵者が厨房に入ったのは何となくである。
この前のお見合いから娘の様子がおかしい。
いつもそわそわ落ち着きなさそうにしているのが気になった。
「何をしているか?」
知恵者がヨーコに話しかけたのは、ヨーコが頬を赤らめながらサンドイッチを作っていた時だった。
「お父さん」
知恵者はヨーコの返事に「おや」と思った。
いつもは心底嬉しそうに素直な返事をするのが、今日の声は艶っぽく感じた。
「サンドイッチを作っていました」
厨房はなるほど、いい匂いに包まれていた。
料理が好きなヨーコは、サンドイッチもパンから作るのである。
「誰かへの贈り物か?」
そう知恵者が口に出した瞬間、ヨーコは「ポンッ」っと頬を赤らめた。
湯気を出しているように恥ずかしそうにもじもじした。
「ハイ……です」
「そうか」
知恵者はのんびり言った。
思えばヨーコは小さい頃からお父さん一筋であった。
それがようやく親離れしようとしているのだ。
少々切ない気持ちにはなるが、ここは祝福してやらなければいけない。
知恵者はもじもじしているヨーコに頷くだけ頷いて立ち去っていった。
娘はこれから綺麗になる。今まででも充分綺麗だったが、これからはもっともっと。
知恵者は柄にも合わず、切ない気分になった。
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「で、知恵者はああやって酒を飲んでいると?」
「いや、酒を飲むのはいつもの事だけど、いろいろ複雑らしいよ? 親離れできたヨーコさんのお祝いとか、子離れしなきゃいけない自分の気持ちとか」
アーシュラとマイトの目線の先には、すっかり酒で出来上がった知恵者が、陽気に音楽を奏でる姿があった。
何を言われても、知恵者にとっては娘は大事、娘に祝福をである。
例え酒で出来上がっているという言い訳を除いても、めでたい、祝いたい気持ちは変わらないのである。
そう酒で言い訳しながら、知恵者は陽気に音楽を奏でた。
娘に、イアラに祝福を。
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ヨーコはバスケットに物を詰めていた。
サンドイッチ、ジュース、シート。全部心を込めて準備したものである。
月光の事を思い浮かべた。
またお見合いの時みたいに喜んでくれるだろうか。
ヨーコははにかみながら笑った。月光の事を考えると、不思議と笑みが浮かぶのだ。
ヨーコ自身はまだ気付いていない。
この感情が「恋」だと言う事を。
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