榊遊@え~藩国さん依頼SS
男とは格好つけたい生き物である。
ハードボイルド。固ゆで卵。崩れないの意。
まあ実際女は自分にだけ弱みを見せてくれる男に惹かれるものなのだが、それはまあ、男の面子と言うものがあるので割愛しておく。
日向玄乃丈もまた、そんな格好つけたい男の一人であった。
/*/
入り江にはたくさんのカヌーが停まっていた。
「わあ」
日向の隣には、榊遊。彼女は珍しそうにキョロキョロしていた。
「カヌーって急流とかで乗っているのを以前映像でみた覚えがあるのですが、レースだとどういう風になるのですか?」
「あのポール、見えるか。7km先だ」
「えっと……」
日向は優しく教えた。
遊は目を凝らして日向の指差す方向を見た。
「あそこにいって、帰ってくる。そう言うレースだ。4チーム出る。賭けも出来る」
「沢山ありますけど1レースでは4艘なのですか?」
「ああ」
「賭けですか……実際のレースをまだ見ていないのでなんとも判らないのですが盛り上がるものなんですの?」
「しばらく見るといいんじゃないか」
日向はそう言うと、近くの席に座った。
「そうですわね、では……」
遊もならって席に座る。
ボートはデッドヒートだ。
是空号と海法号が競っている。
遊は初めて見るカヌーレースに興奮で頬を赤く染めた。
「す、凄い迫力ですわ……コレでお金が掛かったら確かに……」
嬉しそうに言う遊を見て、日向は少しいい所を見せたいと言う誇示欲が頭をもたげた。
「いいねえ。俺もやりたくなるな」
その言葉に遊はきょとんとした顔をした。
「え? 参加出来るのですか?」
「ん。ああ。もちろん」
日向はチラリと入り江を見た。
『ACEと暁、参加お断り』
少し考えたが、まあ勝負に勝ちたい訳ではない。
少しいい所を見せられればそれでいい。
日向は笑って立ち上がった。
「ACEと暁、参加お断りか……」
「……残念ですわ」
「ただ乗るならいいんじゃないか? レース抜きで。やってみるか?」
笑う日向を見て、遊は微笑んだ。
「え? ……あ、是非♪」
その言葉を聞いて日向は上着をポンと遊に渡した。
遊は渡された上着を大事そうに持って、カヌーのオーナーに交渉する日向を見ていた。
どうも借りれたらしい。
日向は上半身で出てきて、遊に軽く手を振った。
「いってくる」
遊は嬉しくなって頷き、手を振った。
「頑張ってください」
/*/
女の前で格好いい所を見せたいと言うのは男の性である。
まあ、その微妙な下心も今は忘れて、日向は一心不乱にカヌーを漕いだ。
風を捕まえた。そこからカヌーは加速する。
あっと言う間に是空号は抜き去った。
そのまま、遊の目から日向は見えなくなった。
遊は歓声をあげていた。
/*/
日向は上機嫌で戻って来た。
いい運動になった。
遊を見つけると微笑んだ。
「中々だったな。いい腕してるといってくれ」
日向はそう他の選手を褒めると、遊の隣に座り、そのままぶっ倒れた。気持ちよさそうに。
遊は「あらあら」と笑いながら日向を見た。興奮でまだ頬が蒸気している。
「凄いです、先に行ってたカヌーをあんなにあっさり抜いてしまって」
「ありがとうと言っておこうか」
「とってもカッコ良かったですよ」
日向も興奮と運動後で体全体が熱で熱い。
遊はそんな彼をうちわで扇いだ。
日向は気持ちよさそうに目を細めた。
「いいねえ。実は、汗がかけなくてな」
「このままお昼寝でもいたしますか?」
「ごめんこうむる。例えゲームでも。女の前でそんなことはしたくない」
「残念です。膝枕をしながら寝顔を見れるかと思いましたのに」
「悪いな。俺にも魅力的には思える。だがどうせなら、格好つけて生きたいじゃないか。どこででも」
風が穏やかに吹いた。
その風に当たり、日向は目を瞑る。
「そうですわね、格好良い生き方に憧れはしますわね。」
「ま、腹減るが」
「でも、好きな人には少しは甘えてもらいたいと思うこともありますよ?」
そのまま二人は、風に吹かれていた。
/*/
男とは格好つけたい生き物である。
ハードボイルド。固ゆで卵。崩れないの意。
女とは格好つけている所も、自分にだけ弱みを見せてくれる所も含めて愛せる生き物である。
二人の関係とは、まあそんなものだ。
ハードボイルド。固ゆで卵。崩れないの意。
まあ実際女は自分にだけ弱みを見せてくれる男に惹かれるものなのだが、それはまあ、男の面子と言うものがあるので割愛しておく。
日向玄乃丈もまた、そんな格好つけたい男の一人であった。
/*/
入り江にはたくさんのカヌーが停まっていた。
「わあ」
日向の隣には、榊遊。彼女は珍しそうにキョロキョロしていた。
「カヌーって急流とかで乗っているのを以前映像でみた覚えがあるのですが、レースだとどういう風になるのですか?」
「あのポール、見えるか。7km先だ」
「えっと……」
日向は優しく教えた。
遊は目を凝らして日向の指差す方向を見た。
「あそこにいって、帰ってくる。そう言うレースだ。4チーム出る。賭けも出来る」
「沢山ありますけど1レースでは4艘なのですか?」
「ああ」
「賭けですか……実際のレースをまだ見ていないのでなんとも判らないのですが盛り上がるものなんですの?」
「しばらく見るといいんじゃないか」
日向はそう言うと、近くの席に座った。
「そうですわね、では……」
遊もならって席に座る。
ボートはデッドヒートだ。
是空号と海法号が競っている。
遊は初めて見るカヌーレースに興奮で頬を赤く染めた。
「す、凄い迫力ですわ……コレでお金が掛かったら確かに……」
嬉しそうに言う遊を見て、日向は少しいい所を見せたいと言う誇示欲が頭をもたげた。
「いいねえ。俺もやりたくなるな」
その言葉に遊はきょとんとした顔をした。
「え? 参加出来るのですか?」
「ん。ああ。もちろん」
日向はチラリと入り江を見た。
『ACEと暁、参加お断り』
少し考えたが、まあ勝負に勝ちたい訳ではない。
少しいい所を見せられればそれでいい。
日向は笑って立ち上がった。
「ACEと暁、参加お断りか……」
「……残念ですわ」
「ただ乗るならいいんじゃないか? レース抜きで。やってみるか?」
笑う日向を見て、遊は微笑んだ。
「え? ……あ、是非♪」
その言葉を聞いて日向は上着をポンと遊に渡した。
遊は渡された上着を大事そうに持って、カヌーのオーナーに交渉する日向を見ていた。
どうも借りれたらしい。
日向は上半身で出てきて、遊に軽く手を振った。
「いってくる」
遊は嬉しくなって頷き、手を振った。
「頑張ってください」
/*/
女の前で格好いい所を見せたいと言うのは男の性である。
まあ、その微妙な下心も今は忘れて、日向は一心不乱にカヌーを漕いだ。
風を捕まえた。そこからカヌーは加速する。
あっと言う間に是空号は抜き去った。
そのまま、遊の目から日向は見えなくなった。
遊は歓声をあげていた。
/*/
日向は上機嫌で戻って来た。
いい運動になった。
遊を見つけると微笑んだ。
「中々だったな。いい腕してるといってくれ」
日向はそう他の選手を褒めると、遊の隣に座り、そのままぶっ倒れた。気持ちよさそうに。
遊は「あらあら」と笑いながら日向を見た。興奮でまだ頬が蒸気している。
「凄いです、先に行ってたカヌーをあんなにあっさり抜いてしまって」
「ありがとうと言っておこうか」
「とってもカッコ良かったですよ」
日向も興奮と運動後で体全体が熱で熱い。
遊はそんな彼をうちわで扇いだ。
日向は気持ちよさそうに目を細めた。
「いいねえ。実は、汗がかけなくてな」
「このままお昼寝でもいたしますか?」
「ごめんこうむる。例えゲームでも。女の前でそんなことはしたくない」
「残念です。膝枕をしながら寝顔を見れるかと思いましたのに」
「悪いな。俺にも魅力的には思える。だがどうせなら、格好つけて生きたいじゃないか。どこででも」
風が穏やかに吹いた。
その風に当たり、日向は目を瞑る。
「そうですわね、格好良い生き方に憧れはしますわね。」
「ま、腹減るが」
「でも、好きな人には少しは甘えてもらいたいと思うこともありますよ?」
そのまま二人は、風に吹かれていた。
/*/
男とは格好つけたい生き物である。
ハードボイルド。固ゆで卵。崩れないの意。
女とは格好つけている所も、自分にだけ弱みを見せてくれる所も含めて愛せる生き物である。
二人の関係とは、まあそんなものだ。
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