霰矢蝶子@レンジャー連邦さん依頼SS
恋心と空の青
恋とは瞬発力である。
理性より感情。
思考より直感。
長考より行動。
蝶子は必死だった。
離れるなんて嫌、置いていくなんて許さない。
必死に必死すぎて。
現在空を延々と落ちている真っ只中だった。
/*/
そこは延々と青空が続いていた。
どこを見回しても空の青。青。青。
蝶子はヤガミに抱きついたまま、この青空を延々と落ち続けていた。
「大丈夫か? 寒くはないと思うが」
ヤガミが声をかけてきた。
当然だ。蝶子はパジャマ姿のままヤガミを追いかけて、ここまで来てしまったのだから。
「はい、大丈夫です。寒くはないです。ありがとう。」
「ここまでいると、もう戻れないな。1年はたっている」
「1年……!」
蝶子は絶句した。
「こ、ここ。なんなんですか? ゲート?」
「そうだな」
ヤガミは答えた。
「これはグリフだ。心の境界面の風景だな」
「グリフ……?」
どこかで聞いた事のある言葉だった。どこかまでは覚えていないけれど。
「心の境界面、ですか。誰の?」
「恐らくは、お前の」
ヤガミは微笑んだ。
「俺なら星空になるはずだ」
「私のー……。そうか。私の心。青空なんですね。」
蝶子も一緒になって微笑んだ。
ヤガミの見える景色を想像してみる。
いつか言っていた「俺は星だ」の発言を思い出し、微笑んだ。
「星空もいいなあ。」
「そうだな。見たいものが見れる。このまま永劫に落ちる」
「ヤガミは、どうやってここに? 私が呼んだから?」
「いや、盛大に落ちていくのが見えたから」
「うわあ見つけてもらってよかった。ありがとうございます。」
「助けたら少し照れたが」
その一言に、蝶子は顔から日が出そうな程真っ赤になった。
「す、すみませ……!」
蝶子が謝るのに、ヤガミは明後日の方向を見た。
ヤガミも何となく頬が赤いように見える。
「……まあ、忘れてやるから安心しろ」
「……覚えててもいいです。恥ずかしいけど覚えてて下さい。それで時々思い出しては照れて下さい。からかってもいいから」
「……だったら謝らなければいいのに」
ぼそりとつぶやくヤガミ。
蝶子はキョトンとした。
「あ、謝らなくてもいいですか。ヤガミが嫌だったかな、と思ってたんですけど。」
「俺は……」
ヤガミは少し言いよどんだ。
「そもそもいつ俺がからかった。からかってるのはお前のほうだろう」
蝶子は「ポンッ」っと爆発した。
「か、からかってなんかないです!からかえるだけの度胸があれば、あれば、もにょもにょ。ヤガミはほら、ヘビドリンクの時とか!この間のデートの時とか!」
あれやこれを思い浮かべてヤガミの腕の中でバタバタする。
「そんなことやったっけ」
「やりましたー! やりましたー! 覚えてるんですからね!」
蝶子の発言にヤガミはガーンと言う顔をした。
「というか抱きついたのはからかってなかったのか!」
からかってると思ってたのか!
蝶子も釣られてガーンと言う顔をした。
ヤガミの腕の中で「うー」とうなった。
「私はいつも大真面目です。」
「俺も真面目だ。実に」
そのまま二人は顔を見合わせた。
そのまま「プッ」と吹き出して、笑った。
似た者同士なのだろう。
/*/
「パーフェクトワールドに行く」
ヤガミは言った。
空の色は、まだ続き、二人の落ちていく速度もまた変わらなかった。
「何をしに?」
蝶子が返す。
「日向と言う男がいる」
「助けたいんですね。日向さんを。」
「そうだ。それに。見てみたい」
「何を?」
「冒険艦でしか見れない光景を」
蝶子はそう語るヤガミの目をじっと見た。
「私を連れては、いけないのですか。」
「だから、国が……」
ヤガミが言いよどむ。
蝶子は王である。レンジャー連邦の。
王がいないと、国は滅ぶ。当然の摂理だ。
それでも蝶子はがんと言う。
「私では。あなたの横で、同じ光景を見れませんか。王様だからふられるんですか。私」
「そうだな。王様というのは自分勝手には出来ない」
「私、あなたを失って、王様を続けていく自信ないんですけど。」
「だから、忘れさせると」
「それは却下。」
蝶子は首を振った。
ヤガミは肩をすくめた。
「頑固すぎるぞ」
「あなたを忘れても同じことです。ずっと私の心を支えてきたのはあなたなんだから。はい。頑固なんです。かたくななんです。頭が固いんです。」
ヤガミが黙ると、蝶子は畳み掛けるように続けた。
「なんて言ったってこれだけは譲れないです。あなただけは、譲らない。」
蝶子の言葉に、思わずヤガミはナニかをしようとした。
蝶子はポッと顔を赤くした。
「め、眼鏡ですか?」
ヤガミは思わず止めた。
「当然だ」
「で、ですよね。えへへ。」
似た者同士二人、抱き合ったまま黙っていた。
/*/
空の青は続いた。
不安を感じないと言えば嘘になる。
でも今は、自分の感情を、直感を、行動を、信じたい。
蝶子はヤガミに抱きついたまま流れに身を任せていた。
目的地は、あと少しである。
恋とは瞬発力である。
理性より感情。
思考より直感。
長考より行動。
蝶子は必死だった。
離れるなんて嫌、置いていくなんて許さない。
必死に必死すぎて。
現在空を延々と落ちている真っ只中だった。
/*/
そこは延々と青空が続いていた。
どこを見回しても空の青。青。青。
蝶子はヤガミに抱きついたまま、この青空を延々と落ち続けていた。
「大丈夫か? 寒くはないと思うが」
ヤガミが声をかけてきた。
当然だ。蝶子はパジャマ姿のままヤガミを追いかけて、ここまで来てしまったのだから。
「はい、大丈夫です。寒くはないです。ありがとう。」
「ここまでいると、もう戻れないな。1年はたっている」
「1年……!」
蝶子は絶句した。
「こ、ここ。なんなんですか? ゲート?」
「そうだな」
ヤガミは答えた。
「これはグリフだ。心の境界面の風景だな」
「グリフ……?」
どこかで聞いた事のある言葉だった。どこかまでは覚えていないけれど。
「心の境界面、ですか。誰の?」
「恐らくは、お前の」
ヤガミは微笑んだ。
「俺なら星空になるはずだ」
「私のー……。そうか。私の心。青空なんですね。」
蝶子も一緒になって微笑んだ。
ヤガミの見える景色を想像してみる。
いつか言っていた「俺は星だ」の発言を思い出し、微笑んだ。
「星空もいいなあ。」
「そうだな。見たいものが見れる。このまま永劫に落ちる」
「ヤガミは、どうやってここに? 私が呼んだから?」
「いや、盛大に落ちていくのが見えたから」
「うわあ見つけてもらってよかった。ありがとうございます。」
「助けたら少し照れたが」
その一言に、蝶子は顔から日が出そうな程真っ赤になった。
「す、すみませ……!」
蝶子が謝るのに、ヤガミは明後日の方向を見た。
ヤガミも何となく頬が赤いように見える。
「……まあ、忘れてやるから安心しろ」
「……覚えててもいいです。恥ずかしいけど覚えてて下さい。それで時々思い出しては照れて下さい。からかってもいいから」
「……だったら謝らなければいいのに」
ぼそりとつぶやくヤガミ。
蝶子はキョトンとした。
「あ、謝らなくてもいいですか。ヤガミが嫌だったかな、と思ってたんですけど。」
「俺は……」
ヤガミは少し言いよどんだ。
「そもそもいつ俺がからかった。からかってるのはお前のほうだろう」
蝶子は「ポンッ」っと爆発した。
「か、からかってなんかないです!からかえるだけの度胸があれば、あれば、もにょもにょ。ヤガミはほら、ヘビドリンクの時とか!この間のデートの時とか!」
あれやこれを思い浮かべてヤガミの腕の中でバタバタする。
「そんなことやったっけ」
「やりましたー! やりましたー! 覚えてるんですからね!」
蝶子の発言にヤガミはガーンと言う顔をした。
「というか抱きついたのはからかってなかったのか!」
からかってると思ってたのか!
蝶子も釣られてガーンと言う顔をした。
ヤガミの腕の中で「うー」とうなった。
「私はいつも大真面目です。」
「俺も真面目だ。実に」
そのまま二人は顔を見合わせた。
そのまま「プッ」と吹き出して、笑った。
似た者同士なのだろう。
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「パーフェクトワールドに行く」
ヤガミは言った。
空の色は、まだ続き、二人の落ちていく速度もまた変わらなかった。
「何をしに?」
蝶子が返す。
「日向と言う男がいる」
「助けたいんですね。日向さんを。」
「そうだ。それに。見てみたい」
「何を?」
「冒険艦でしか見れない光景を」
蝶子はそう語るヤガミの目をじっと見た。
「私を連れては、いけないのですか。」
「だから、国が……」
ヤガミが言いよどむ。
蝶子は王である。レンジャー連邦の。
王がいないと、国は滅ぶ。当然の摂理だ。
それでも蝶子はがんと言う。
「私では。あなたの横で、同じ光景を見れませんか。王様だからふられるんですか。私」
「そうだな。王様というのは自分勝手には出来ない」
「私、あなたを失って、王様を続けていく自信ないんですけど。」
「だから、忘れさせると」
「それは却下。」
蝶子は首を振った。
ヤガミは肩をすくめた。
「頑固すぎるぞ」
「あなたを忘れても同じことです。ずっと私の心を支えてきたのはあなたなんだから。はい。頑固なんです。かたくななんです。頭が固いんです。」
ヤガミが黙ると、蝶子は畳み掛けるように続けた。
「なんて言ったってこれだけは譲れないです。あなただけは、譲らない。」
蝶子の言葉に、思わずヤガミはナニかをしようとした。
蝶子はポッと顔を赤くした。
「め、眼鏡ですか?」
ヤガミは思わず止めた。
「当然だ」
「で、ですよね。えへへ。」
似た者同士二人、抱き合ったまま黙っていた。
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空の青は続いた。
不安を感じないと言えば嘘になる。
でも今は、自分の感情を、直感を、行動を、信じたい。
蝶子はヤガミに抱きついたまま流れに身を任せていた。
目的地は、あと少しである。
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