忍者ブログ記事別アクセス推移 多岐川さんのアイドレス日記: 2009年06月
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2009年06月

  1. 2009/06/24 プロポーズ したら3日は 待ちぼうけ
  2. 2009/06/23 2回目の誕生日
  3. 2009/06/17 沢邑勝海@キノウツン藩国様依頼SS

プロポーズ したら3日は 待ちぼうけ

多岐川佑華 :こんばんはー21:00からの生活ゲームに来ましたー

芝村裕吏さん :記事どうぞ

多岐川佑華 :

【予約者の名前】03-00058-01:多岐川佑華:FEG
【実施予定日時】2009年6月24日/21:00~22:00
【ゲーム実施時間】20マイル×1時間
【予約の有無】予約 有り(10マイル)
【召喚ACE】
  ・小カトー・多岐川2:個人ACE:0マイル
【参加プレイヤーの食糧消費】3マイル×1人
【合計消費マイル】計33マイル
【参加者:負担するマイル】
  ・03-00058-01:多岐川佑華:-33マイル:入学済

#誕生日枠を取得しましたので消費マイルは0マイルになります。

多岐川佑華 :イベント選択の前に質問とl:とかr:とか通してよろしいでしょうか?

芝村裕吏さん :ええ。どうぞ

多岐川佑華 :ありがとうございます。若干長いですが(主にl:が)

芝村裕吏さん :まあ、いいんでないの?

多岐川佑華 :Q1:小カトーとPLACEが同居して、小カトーの体感時間ではどれ位経っているんでしょうか?

Q2:小カトーの年齢を聞いた事がないんですが今あの子何歳でしょうか?

Q3PLACEは要点でピンク髪隠してますけれど、PLACEを着用する場合は普段通しているウィッグをつけるl:は通さなくて大丈 夫でしょうか?(仮に通してみたらウィッグ2つと言うのも……)

Q4:結局是空さんと小カトーの話し合いは行われたのでしょうか? 指輪がどうと言う話は*1

多岐川佑華 :
l:小カトー・多岐川の誕生祝いの食事=小カトーの好物のハンバーグを中心にしたご飯
l:多岐川佑華は日頃から小カトーにご飯を作っている=小カトーの好みのご飯が作れる
l:多岐川佑華は小カトー帯同だと+3評価が出る=小カトーが傍でご飯を待っている時に作るご飯はおいしい
l:多岐川佑華の料理評価= 全能力23+HQ継承1+小カトー帯同3
l:本日のご飯内容=

本日のご飯


#ちなみに用意していたケーキ

本日のケーキ



l:多岐川佑華は左薬指にバンバンジーの変身指輪セットをつけている=側面:多岐川本人が満足する

l:多岐川佑華は左薬指にバンバンジーの変身指輪セットをつけている=側面:多岐川は左利きなので結婚指輪は右手薬指につける

r:PLACEを着用してPLACEのここ数日の記憶を探ります

芝村裕吏さん :A1:4,5年

芝村裕吏さん :A2:20くらい

芝村裕吏さん :A3:ええ

芝村裕吏さん :A4:やってるみたいねえ

芝村裕吏さん :通った>l:

芝村裕吏さん :ここ数日は平和に過ごしている

芝村裕吏さん :中々、そわそわしてるが相手はのんびりだ

多岐川佑華 :あはははは、ありがとうございます

多岐川佑華 :イベントですが、誕生花の花束の特殊を使って、家でまったり誕生祝いができたらいいなあと思います。隙があったらプロポーズします。 プロポーズ……。

芝村裕吏さん :OK

芝村裕吏さん :1分待て

多岐川佑華 :はいー

芝村裕吏さん :/*/

芝村裕吏さん :ここは貴方の家だ

芝村裕吏さん :小カトーはのんびりというよりは、ぼへーとしている

多岐川佑華 :今日の服装です

誕生日おめでとうー


多岐川佑華 :「ショウ君、待ってねー。すぐご飯出すからー」l:で用意したご飯をいそいそ出します

小カトー:「ああ、うん」

多岐川佑華 :「えへへー」にこにこしながらご飯を並べています。用意したケーキはまた後で

芝村裕吏さん :小カトーは貴方を見ている

芝村裕吏さん :不思議そう

多岐川佑華 :「? なあに?」にこにこ

小カトー:「年とるのって、いやじゃない?」

芝村裕吏さん :小カトー:「うちのかーちゃん、すげーいやがってたけど」

多岐川佑華 :「そうかなあ? 私もそう思う事はあるけどね。でもさ、年取らないとできない事はあると思うよ?」

小カトー:「俺、酒はうまいとか思わないな」

多岐川佑華 :「私もだよ? タバコも吸わないし、車も運転できないし」

小カトー:「俺、原付は乗れるよ」

多岐川佑華 :「本当? 今度乗せてもらえる? 後ろに」にこにこ

小カトー:「うん。いいよ」

多岐川佑華 :「うにゃー、ありがとうー」にこにこにこにこ

多岐川佑華 :「はい、ご飯食べよー」並べ終えて席着きます

小カトー:「いただきます」

多岐川佑華 :「ショウ君誕生日おめでとう。またショウ君の誕生日祝えて嬉しい」にこー*2

芝村裕吏さん :小カトーは微笑んだ。

小カトー:「ありがと」

多岐川佑華 :「うん」にこにこにこにこ

多岐川佑華 :小カトーが手をつけるの見てから自分も少しずつ食べ始めます

小カトー:「うめ!」

多岐川佑華 :「よかったー」にこー

多岐川佑華 :「……あのね、ショウ君に今日話そうって決めてた事があるんだけど、食べながらでいいから聞いてくれる?」

小カトー:「……いいよ」

多岐川佑華 :「そろそろね、いいかなあと思うの」

小カトー:「世界速度記録?」

多岐川佑華 :「うにゃー。そうじゃなくってー。えっとね。ずっと一緒に暮らしててね、これからも、同じもの見て、同じもの聞いて、同じもの食べたいなあって、そう思うの」

多岐川佑華 :「……お嫁にもらって下さい」

芝村裕吏さん :小カトーは静かに食べている

多岐川佑華 :えーっと言う顔をしています……

小カトー:「もすこし、待ってくれない? 独身時代に、一個やりたいのがあってさ」

多岐川佑華 :「うにゃ? なあに?」

小カトー:「そんなにかからないよ。そうだな。2,3日?」

多岐川佑華 :「? うん!!」こっくり頷きます

芝村裕吏さん :小カトーはにこっと笑った

多岐川佑華 :一緒に笑っています

多岐川佑華 :Q:2、3日でも時間を飛ばすのは無理でしょうか? また何かまずいでしょうか?*3

芝村裕吏さん :A:とばさないほうが、たぶんいい

多岐川佑華 :#了解しました

多岐川佑華 :ご飯食べ終わったの見計らったらケーキとお茶の用意をしています

芝村裕吏さん :小カトーはにこにこしている

芝村裕吏さん :ひどく上機嫌そうだ

多岐川佑華 :お茶用のお湯が沸くのを待っている間小カトーの横に引っ付いています

芝村裕吏さん :小カトーは貴方を見ている

芝村裕吏さん :どこか不思議そう

多岐川佑華 :「私、ショウ君と一緒に暮らしてて、ちゃんとやってこれた?」

多岐川佑華 :ギューしています

小カトー:「俺があんまり帰ってこないから、点数なんかつけられないな」*4

多岐川佑華 :「にゃー……私は、ショウ君帰って来てくれて、ご飯作って、それを「おいしい」って言ってくれたら、それが一番嬉しいよ?」

小カトー:「うん」

多岐川佑華 :「待ってる。ショウ君が私をお嫁さんにしてくれるの、待ってる」ギューした後、小カトーを物欲しそうな顔で見ています

芝村裕吏さん :小カトーは額にキスしたよ。

小カトー:「なんか、ぜくーさんにいわれた?」

多岐川佑華 :「ううん?」フルフル

多岐川佑華 :「お嫁に行きたいとは言った」

多岐川佑華 :「私が」

小カトー:「あの人、独身だから、言う資格ないと思うんだよなあ」*5

芝村裕吏さん :小カトー苦笑い

多岐川佑華 :「藩王、好きな人いて、結婚する用意もしてるのに、相手が帰ってこないんだよ」

小カトー:「うん。きいたことある。亜細亜からも」

多岐川佑華 :「本当はその人に私泣き言言ったから、ちゃんと私とショウ君一緒に幸せになれたって言いたいけど」

多岐川佑華 :「亜細亜ちゃん、ショウ君知ってるの? 私はあゆみさんの結婚式で会った位だけど」

小カトー:「……俺もあんまりは知らないけど、助けたことはあったから」

多岐川佑華 :「そっかー」ギュー

多岐川佑華 :「私は意気地がないけど幸せだよー」小カトーの頬にキスします

小カトー:「そっちは、俺にあるから」

芝村裕吏さん :小カトーは貴方にキスした

多岐川佑華 :にゃー。キスし返します

芝村裕吏さん :小カトーは貴方をなでなでした

多岐川佑華 :されるがままになっています。スリスリ

芝村裕吏さん :小カトーは微笑んだ

芝村裕吏さん :ぎゅーされた

多岐川佑華 :ギューしてます

多岐川佑華 :「幸せになろうねー」

小カトー:「……難しいこというなあ」

多岐川佑華 :「ならショウ君にとっての幸せってなあに?」小カトーの髪触っています

小カトー:「定義は同じだと思うけど、かなえるのがさ」

小カトー:「ここは、平和じゃない」

多岐川佑華 :「平和じゃなくても、一緒にいれたら幸せだよ。平和でも、一緒にいれなかったらそこは地獄と変わらないよ?」

芝村裕吏さん :小カトー:「そう言う意味なら、大丈夫じゃないかな。俺、今まで勘違いしてた」

多岐川佑華 :「うにゃ?」キョトンと小カトーの顔を見ています

小カトー:「いや。帝國にいったりしてたからさ」*6

多岐川佑華 :「ショウ君いなかったから探しに行ったんだよ? あの時は。いなかったから謝って帰ってきたんだよ」

小カトー:「……ふうん」

小カトー:「ま、いいさ」

多岐川佑華 :「にゃー」スリスリしています

芝村裕吏さん :小カトーは微笑んだ

芝村裕吏さん :/*/

芝村裕吏さん :はい。おつかれさまでした

多岐川佑華 :お疲れ様ですー。あの、2,3日ってアイドレス時間でどれ位でしょうか?

芝村裕吏さん :リアルタイムだよ

多岐川佑華 :了解です。あの子の用事って世界最速記録の再挑戦でしょうか?

芝村裕吏さん :いや

多岐川佑華 :あう、分からずじまいですか。了解しました

芝村裕吏さん :はい。

芝村裕吏さん :評価は+1+1でした

芝村裕吏さん :秘宝館には1,1で依頼できます

芝村裕吏さん :では解散しましょう。おつかれさまでしたー

多岐川佑華 :お疲れ様ですー


*1:何故かEV146の候補に自分が入っていてびっくりして問い合わせに行ったら是空さん(ACE・PL)が嫁に行かせようとしていました。日頃から生活ゲーム後にPCがしばらく小カトーの世話をしているのを見て嫁に行かせようと思い立っていたらしいです
*2:去年はあまりにろくでもなかったので普通に祝えてよかったです。去年のログです。
*3:T14現在は時間を飛ばしたりするのは非常にまずいようです。
*4:ああやっぱり。(ずっと家には寝に帰って来ていると思っていたらしい)
*5:ちなみにEV146の話し合いの際、是空さん(PL)が小カトーに「結婚いいよ」と言いに行こうと言う話をしていたらしいのですが、本当に是空さん(ACE)がしに行っていたようです。私は断ったんだけどなあ……。是空さんきっと小カトーに「ならどうして是空さんは結婚しないの?」とか訊かれて「打たれ弱い(強制イベント)」になると思ったから……。
*6:一度小カトーが帝國にある西方有翼騎士団に所属していた事があり(ちなみに団長は今日子ちゃん)、共和国と帝國が不穏な空気になった時、西方有翼騎士団にいる小カトーと連絡が取れなくなりました。パニック起こして共和国から帝國に転藩した所、小カトーは共和国大変そうなのを見て騎士団辞めてFEG国民になり、すれ違ったと言うかなりアホな話がありました。詳細はこちらにまとめています(かなりアホな出来事です)。
*7:まあ結果はリアルタイムで3日後、何もない事を祈ります。


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2回目の誕生日

本日のご飯

・ハンバーグ(トマトソース)
・ミニトマトときゅうりとレタスのサラダ
・ビシソワーズ
・ご飯
・ケーキ

本日のご飯


本日のケーキ

本日のプレゼント

・?

本日の服

誕生日おめでとうー




SS

 誕生日前日。
 レンタルショップ四季折々は、今日も平和である。
 多岐川佑華は今日も平和に人が来ない店で、店番をしながら、ガクガク震えていた。
 店員の芹沢琴が怪訝な顔をしている。

「佑華さん。そんなにガクガク震えるんでしたら、何もプロポーズせんでも普通に誕生日祝えばよろしいじゃありませんか」
「芹沢……」

 多岐川は涙目であった。

「イヤ、ダッテ3回目ダヨ? サスガニ今回モ避ケラレタラ私家出スルシカナイヨ?」
「いや、何も家出せんでも……」
「1回目ぷろぽーずスル前ニ逃ゲラレタヨ。ダッテ知ラナカッタンダモン。ぴんく髪怖イナンテ知ラナカッタンダモン」
「まあそうですねえ、そこは小カトーさんが悪いですわねえ」
「2回目指輪チョウダイッテ言ッタラコレクレタヨ?」

 多岐川の左指にはバンバンジーの変身指輪セット(直訳:おもちゃ)が光っている。

「アンタ喜んでたじゃないですか」
「イヤ、初メテぷれぜんとモラッタカラ普通ニ喜ブケド。日本語通ジテナイトハ思ウヨ?」
「で、3回目は回りくどい事止めて直接言うと」
「女ノ人カラノぷろぽーずッテ何言エバイイノデショウカ?」
「前例あまりありませんからねえ……」
「アル事ニハアルケド相手ニ通ジルカドウカダヨ。ドウシヨウ」
「……まあ、骨は埋めてやりますわよ」
「私ニ何カアッタラ、店ノ会計君ガヤッテクレ」
「……ひどく具体的ですわね」

 多岐川は縦にも横にも揺れていた。

「アー、買出シニ行カナイト……」
「晩御飯ですかー?」
「明日しょう君ノ誕生日ー。オ祝イスルー」
「……その気持ちがあれば普通に言ったら大丈夫な気がしますがねえ」

 多岐川はゆらゆらしながら買出しに出かけていったのを、芹沢は微妙な気分で見送っていた。

沢邑勝海@キノウツン藩国様依頼SS

 決着


「……111、112、113……」

 わんわん帝國は皇帝の住まう宮廷の一角。
 そこで男の低い声が聞こえた。
 息が荒い。

「皇子、鍛錬の中申し訳ありません」

 男の動きが止まる。
 床に崩れる事はなく、そのまま床を手を大きく弾き、その反動で綺麗に立ち上がった。

「何か?」
「皇子とご懇意の方の国……キノウツン藩国が制圧されました」

 男……皇子の目が大きく開かれる。

「一体どこに?」
「それが……管理機構と言う組織であり、国の摂政を人質に取っていると」
「……了解した」

 皇子はそのまま手すりにかけていた上着を羽織った。

「どちらに?」
「約束を果たしに」
「ヘリは出しますか?」
「必要ない」

 そのまま皇子は走っていった。
 宴を繰り広げるかの国へと。


/*/


 キノウツン藩国。
 その日は、国を挙げての宴が繰り広げられていた。
 鉄の匂い、火薬の匂い、微量に混じる花の匂い。
 谷口竜馬は国境に入った瞬間、目を閉じ、耳を澄ませた。
 一度谷口は手痛い敗北をしている。
 だが、あれからずっと修行を積んでいた。ここで負ける訳にはいかない。
 気配がした。
 谷口は宙に手を広げ、拳を開いた。
 手の中に拳が入っていた。
 谷口に一撃を食らわせようとした漢はニヤリと笑った。
 迅雷の力石。かつて谷口を敗北に追いやった漢だ。

「ほう……前は私の拳すら見えていなかったみたいですが」
「あの頃の自分は未熟だった。だが、今は違う」

 風が吹いた。
 4月になったばかりの冷たい風だ。
 互いは構えた。
 ゴングは鳴らずとも、戦いは始まった。


/*/


 沢邑勝海は普段着のメイド服を着て国内を彷徨っていた。
 手には季節外れのバレンタインチョコを持って。
 このチョコは谷口に送り、送り返されてきたものだった。何も受取拒否をされたのではない。

”後日、直接受け取りに参ります。谷口”

 送り返されてきたチョコに同封していた手紙にはそう短く書かれていた。
 故に、沢邑はその言葉を信じて、こうして会いに来た。
 そう、会いに来た。
 のだが……。
 …………。

「うう、竜馬さんー、どこですかー!」

 沢邑の懸命な叫び声は歓声にかき消された。
 国内全土で所構わず行われている番長バトル。番町バトルに馳せ参じたと、NW各地から番町達がやってきて、キノウツン側と管理機構側に分かれて戦っている。巻き込まれないように見ている観客も、髪の色は様々だ。

 と、突然地面がぐらりと揺れた。

「!?」

 沢邑はとっさに避けた。
 地面が割れたのだ。
 そして地面が割れた先にいたのは。

「……え? ……力石さん……って」

 力石は笑っていた。
 対峙しているのは、沢邑がずっと探していた相手、谷口であった。
 沢邑では見えない程の速さの拳が、谷口めがけて飛ぶ。
 それを谷口は手を広げて受け止めた。
 前はそれが見えずに敗北したが、今回はそうではない。

「ついてこれているなんてね」
「まだ半分だが」

 一瞬の沈黙。
 先に動いたのは力石であった。

 シュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュ

 拳が飛んだ。その拳はもはや光の矢のようであり、拳の軌跡だけがかろうじて見える程度である。その軌跡、数えられない。

「!? 止めて下さい!」

 沢邑が走って谷口を庇うよりも早く、谷口もまた動いた。
 その時間は、わずか30秒の事であった。
 谷口は笑っていた。あの拳撃を避けきったのである。2・3発は喰らい、血を流していたが、それでも立っていた。
 そのまま身体を捻る。足を大きく振り、力石の脇腹目がけて蹴りを入れようとしたが、力石は少し身体を捻って避けた。

「倒れるまでの時間がながくなっただけのようで」
「どうかな」

 二人は睨み合っていた。
 喧騒の中にいて、二人の間の空気は冷たく、静寂が包んでいるかのように見えた。
 冷たいのは何もまだ4月上旬と言うだけではなかろう。
 沢邑は二人の間に割り込むかどうか迷った。
 彼女は知っている。谷口が、いかに再戦を望んでいたかと言う事を。いかに修行を重ねていたかと言う事を。
 二人は再び組み合った。
 谷口が身体を再度大きく捻る。それを避ける力石。

「……竜馬さんは負けませんよ! 絶対!」
「無駄です」

 沢邑は涙を溜めてそれを見守っていた。それを嘲笑うかのように、力石の手は谷口を狙っていた。
 力石の目に見えない程の圧力が谷口を貫いた。
 谷口の頬から血が迸り、それがびちゃりと沢邑に当たった。

「……竜馬さん……」

 沢邑は悲鳴を上げるのをこらえて、谷口を見つめた。
 谷口は振り返らない。再度力石に向かっていった。
 また、大きく足を振り上げる。
 力石は既に見切ったかのように、軽く避けた。

「無駄だと……」

 力石の言葉は冷たい。
 しかし、対する谷口は笑っていた。

「だって、修業して強くなったんですよ! 貴方に負ける訳ないじゃないですか!」

 沢邑はそう叫んだ後、谷口を目で追っていた。
 谷口は力石を拳を5発は浴びているはずなのに、致命傷は負っていないように見える。
 力石の拳に耐え切った谷口は、再度大きく足を振るった。それをまた避ける力石。
 そこで沢邑は気がついた。
 最初に二人が組み合った場所から、何度も谷口が足を振るい、力石がそれを避けを繰り返す内に、500mは移動していたのだ。

「……何か狙ってるんかな……」

 沢邑はそう漏らした瞬間、力石は反射的に距離を測った。
 谷口に対して警戒をしたらしい。

「作戦ですか」
「ああ」

 二人の間に青い火花が散っているように、沢邑には見えた。
 ふと、力石は沢邑の方を見る。
 力石はきちんとした礼をして見せた。
 え……?

「勝利の女神に」
「……は、はい」

 沢邑は思わず声を上ずらせて礼をし返した。
 力石はきびすを返すと、谷口に襲い掛かった。

 ドシュッ、ドシュッ、ドシュッ

 相変わらず重い拳ではあるが、先程より技のキレが鈍っているように見える。
 もしかして、慎重が過ぎて加減をしているのかもしれない。
 しかし、拳の重さに負け、遂に谷口の膝は折れた。
 血がびちゃりびちゃり、と血溜まりを作る。

「竜馬さん!!」

 沢邑は堪えきれず、とうとう泣き出した。そして叫ぶ。

「立って下さい! 私、絶対に信じてます! 貴方が勝つ事を!」

 それを嘲笑うかのように、力石は消えた。
 またかっ!?
 沢邑は力石を探す。
 かつて谷口は、消えた力石の奇襲によって敗れている。
 谷口はもう、負けない。負けたくない。その事を誰よりも沢邑は理解していた。
 ふと谷口を見る。
 谷口は血で服を張り付かせ、なおも立ち上がった。
 足を、大きく振り上げた。
 消えたはずの力石が引っ掛かった。
 初めて、力石に蹴りが入った瞬間である。
 力石は受け身を取る間もなく、地に伏した。

「………」
「……やった……んですか?」
「まさか……」

 谷口と沢邑が見守る中、力石はよろよろと立ち上がった。
 息が上がっている。

「どうやって?」
「俺を狙ってる以上は、攻撃の範囲は限られる。あとは、勘だ」
「嘘かも知れない」
「本当かも知れない」

 力石は先程までの余裕が消えていた。
 谷口を睨み、一挙一動に探りを入れ始めた。
 谷口もまた同じ。
 二人は間合いを取ったまま、硬直していた。
 互いに探りを入れつつ、身体は次の一撃のために休ませている。
 谷口は懐からハンカチを取り出すと、やや固まり始めた血を拭い始めた。

「休ませていいのか?」

 谷口は血を拭いながら尋ねる。

「私も休んでいますよ」

 力石は笑っている。しかし、目はずっと谷口の挙動を追っている。
 そして沈黙が流れた。
 それは時間にすればわずかかもしれないが、互いの読み合いの末の冷戦で、場の空気はピリピリと痛い位に冷え切っていた。
 沢邑は思わずブルッと身体を震わせ、両腕を押さえた。
 その時だった。

 先に動いたのはどちらが先立ったのか。
 谷口はハンカチを離した。ハンカチは風になびいた。
 力石は消えた。
しかし。
次の瞬間、谷口の蹴りが力石を捕らえる。

「カウンター!」

 沢邑は手をぎゅっと握り締めて見守った。
 力石は吹っ飛んだ。
 起きるか? そう思い沢邑が見るが、力石が起きる気配はない。
 脳震盪でも起こしたのだろうか。彼は伸びて動かなかった。
 沢邑はそっと谷口の傍に寄った。谷口は黙っていたが、背中で息をしていた。

「目に見えないだけで、ハンカチは揺れている」
「なるほど。動いたら風は起こるって事ですか」
「最初のはまぐれ当たり。二回目は、ハンカチを自然に取り出せた次点で、もう、きまり」
「なるほど……勉強に、って技術が追いつかなさそうですけど」

 沢邑は谷口の隣に寄った。
 谷口は、ようやく沢邑の顔を見た。
 少しだけ口角を上げ、礼をした。

「この間は、すみませんでした」
「いえ、ちゃんと持ってきてますよ、約束のもの」

 沢邑はにっこりと笑い、包みを差し出した。
 チョコレートは、ようやく本来の持ち主の手に渡った。


<了>

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