忍者ブログ記事別アクセス推移 多岐川さんのアイドレス日記: 2008年11月
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2008年11月

  1. 2008/11/26 夜國涼華@海法よけ藩国さん依頼SS
  2. 2008/11/18 黒霧@星鋼京さん依頼SS
  3. 2008/11/13 雹@神聖巫連盟さん依頼SS
  4. 2008/11/08 八守時緒@鍋の国さん依頼SS
  5. 2008/11/04 店企画

夜國涼華@海法よけ藩国さん依頼SS


 天高く雲は流れ


 秋である。
 空は高く、晴天。
 しかし、残暑に厳しい日であった。
 残暑の季節に体育祭はやってくる。


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「あっつい…日焼けがぁー」
 涼華はじっとり湧き出す汗を腕でぬぐう。汗は止まる事なく出てくる。
「残暑が厳しいな…。」
 亀助も額の汗を拭きながら空を仰ぐ。
 他の体育祭参加面々もまだ競技が始まる前だと言うのにぐったりしている。
 そして、涼華と亀助と一緒に参加している滋賀小助もまたぐったりしていた。最も、同じく一緒に参加している玖珂晋太郎は割と元気そうににこにこ笑っていたが。
「滋賀君! 冷たいスポーツドリンクあげる!!」
 亀助は師匠として慕う小助にペットボトルをさっと取り出して渡した。
 普段なら何か嫌味でも言う所だが、小助は珍しく素直に受け取った。
「礼は言っておく」
「雪でも食べる?」
 冗談か本気か先程からにこにことプログラムを読んでいた晋太郎か声をかける。
「もうこりごりだ」
 小助はぽそりと言った後、二人で笑った。
 その二人を微笑ましく涼華は見ていた。
 とそこでノイズ混じりのお知らせが入った。

 ピンポンパンポン

『次の種目は障害物競走です。参加者の皆様は西側の入場門にお集まり下さい』

 ピンポンパンポン

 小助は少し嫌そうな顔をしたが、渋々と言った風に立ち上がった。
 隣で亀助も元気に立ち上がった。
「今日は正々堂々、競技で戦うから、命の心配無しっ!! たぶん!」
 亀助は涼華と晋太郎に少し会釈してから元気に入場門まで走っていった。その後ろを小助がだるそうについていった。


「よーい、ドン」

 パーンとピストルが鳴る。
 亀助は元気に走り出した。が、小助にはやる気がないらしい。亀助の後ろをトロトロ走っていた。
「滋賀君やる気0!? 漢が勝負を捨てて良いのか!! 俺は全力で戦うぞ!」
 亀助は遥か後ろでトロトロ走る小助に叫ぶが、小助は半眼である。
「好きにやれ、そして夏の暑さに死ね」
 既に9月ではと言うつっこみはなしである。
「暑さで死ぬほどやわじゃ無い。やる気がないなら、俺が先にゴールさせてもらう。」
 亀助はそう言い、ゴールを目指してカーブを曲がり、ふと後ろを見て気がついた。
 口は悪いし力は強いが病弱な小助は、残暑には勝てなかったらしい。熱中症で倒れたのだ。
「ぎゃーっ!」
 観客席で亀助と小助の応援をしていた涼華が慌てて小助の元に駆け寄った。
 涼華と一緒にいた晋太郎は冷静に氷を持ってきて火照った小助の身体を冷やしていた。
「亀助、ダッシュで冷えたタオルと岩手をっ」
 ゴールした亀助に涼華はそう叫んだ。
「岩手っ!? 観覧席に居るか!?」
 亀助は観客席を叫んで探したが、今日は岩手はいないようだった。
 涼華は半べそをかきながら小助の側に座って晋太郎と一緒になって小助の身体を冷やしていた。
「ばかーばかー! 早く言いなさいよ! ギリギリまで耐えるなぁーっ 」
 小助にそう怒鳴った。
 小助はぐったりしていて、反論する力も残っていないように見えた。
「晋太郎さん、小助の様子はどんな感じですか? 意識あります?」
「えーと。テントに運ぼう」
 晋太郎はそう言って小助を抱えた。
 ぱっと走って来た亀助も心配そうに小助を運ぶのを手伝い始めた。


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 テントの下でぐったりしている小助の脇と首を亀助は冷えたタオルで冷やしていた。
 テントの下は若干風が通って涼しい。
 今は涼華と晋太郎は次の競技に行ったので二人っきりだ。
 亀助はパタパタと団扇で小助を扇ぐ。
(滋賀君、倒れる前に言えば良いのに…。まぁ人に弱味見せる奴じゃないか。)
 性格の問題だもんなあ。亀助はそう思いながらパタパタ扇ぐ。
 小助がうめき声を上げた。
「水……」
 亀助は慌てて小助を抱き起こして側に置いていたペットボトルを口元まで持っていった。
 しかし小助は自分で飲む力がないらしい。そのままペットボトルから水が零れて小助は水浸しになった。
(…口移しで飲ませたら、後で殺されるだろーなぁ。頼む! 自力で飲んでくれ!!)
 ペットボトルを傾けて少しでも飲んでもらおうと小助の口に注ごうとするが、小助は自分で口を開ける力も残っていないようだ。
 亀助は少し考えた後、「…くっ! 人命優先だっ!!」とペットボトルの水を口に含んで小助に口移しで飲ませようとした……。
 小助の閉じていた目が急に開いて、亀助を殴りつけた。
 理不尽を地で行く人物である、小助は。
「何をやってる、まったく……」
 小助は半眼で亀助を睨んだ。
 しかし亀助は小助が元気になって嬉しそうである。
「ぶはっ! 人殴る前に水を飲め! さあ飲め!!」
 亀助は殴られた頬を押さえながらペットボトルを投げた。
 小助は黙ってペットボトルを受け取って水を飲み始めた。
 やれやれと亀助は一安心し、肩をすくめた所で、 パーンとピストルが鳴り、次の競技が始まった。
 涼華と晋太郎が出場する二人三脚である。
「晋太郎さん、涼華がんばれにゃーっ!」
 始まって亀助がエールを送り始めた途端。
 小助の目が一瞬小さくなったかと思うと、亀助は小助に殴り飛ばされた。
「何故!!??」
 亀助は殴り飛ばされながらそう叫ぶのであった。

 本当に理不尽を地で行く人物である、小助は。


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 亀助が小助の看病に悪戦苦闘している時間と同時刻。
 涼華は入場門に晋太郎と並んでいた。
 紐が配られ、めいめい相方と自分の脚を括り始めた。
「晋太郎さん、二人三脚は得意ですか?」
 晋太郎に脚を括られながら涼華は訊く。
 晋太郎が首を傾げた。
「僕? うーん。不得意だね。どうも、コンパスがあわなくて」
 そう言いながら「終わった」と立ち上がった。
 晋太郎の身長は180cm近くある。小柄な涼華だと見上げる位の身長差になる。
 故に涼華は少し悔しそうに晋太郎を見上げた。
「晋太郎さん、身長ありますしねー…光太郎さんとなら、うまくいくかしら…」
 150cm台の涼華は少ししょげるのを見てか、晋太郎がにこにこと笑った。
「まあ、ころんだりしないように、ゆっくりやろう」
「はいっ!」
 涼華が嬉しそうに頷いた所で入場の合図が鳴った。

 パーンとピストルが鳴り、スタートラインから走り始めた。
「行きます! 1・2・1・2」
 涼華は晋太郎の背中を掴んでリズムを取る。
 晋太郎は涼華とコンパスがあわないのに気を使ってか、ゆったりと脚を動かす。
「1・2・1・2」
 一生懸命走っていて、ふと見上げると晋太郎がこちらの顔をじっと見ていた事に気がついた。
 目線が合い、涼華は「は、はうっ」と思わず息を飲んだ。
 できれば、この時間が長く続いて欲しい。
 そう思ってか、ゴールに着いたのも、自分達の順位の事も、頭に入らなかった。
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黒霧@星鋼京さん依頼SS


 終わる物語


 お話というものがある。
 嬉しいお話。悲しいお話。楽しいお話。
 どのお話も一つとして同じというものはなく、それぞれ違う輝きを放っている。
 何故お話はこうして光り輝いているのか。
 それは、お話は終わるからである。
 終わらないお話は悲しいお話。お話は、終わるからこそ美しい。
 そして、今日もまた物語を終わらせるべく歩く人がいた。


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 ガタンガタン

 馬車は不快にならない程度に音を立てながら走っていた。
 黒霧は膝の上にホワイトスノーを乗せ、外の景色を眺めていた。ホワイトスノーは大人しく黒霧の膝に座っていた。
 夏の園には何度か来た事があるが、今日も日差しは強く、馬車が走って吹く窓からの風が心地よく感じる。
 向かいにはラッシーが座っていた。黒霧とラッシーは流れるように変わる窓の景色を眺めていた。
「夏の園に住んでいるのかい?」
 ラッシーは窓から視線を外し、黒霧に視線を移してそう言った。
「いいえ。夏の園には月に一度ほど……来れるかどうかといったところでして」
 黒霧は苦笑しながらホワイトスノーを撫でた。ホワイトスノーはゴロゴロ言いながら気持ち良さそうに目を細めている。
「なかなか、帝国の中でも豊かなほうだと思うよ」
 ラッシーがのんびりとしながら言う。
「豊かか……」
 黒霧は少し前の話を思い出した。
 少し前、ホワイトスノーに導かれるように訪れた漁村の事を。
 黒霧は自然とその話を口に出した。
 それを黙って聞くラッシー。ホワイトスノーは相変わらず黒霧の膝の上でおとなしく座っている。
「……それでですね、そのときアリエスの写真を見たんですよ」
 そこまで話が進んで、ラッシーはきょとんとした顔をした。
「漁村の子だったのかい?」
 聞いた話ではアリエスは別荘で出会ったと聞いたけれど。
 ラッシーは少し考えた後、合点した。
「あ、そうか。それはまた、美しい話だね」
 今度は黒霧がきょとんとする番であった。
「ああいえ。ただ、ですねぇ。この話には続きがありまして。写真を見た家に住んでいるご老人の話では、ずいぶん前に死んだ、と」
「だろうね」
 ラッシーが頷いたのに黒霧は「???」と顔を乗り出した。膝の上のホワイトスノーが黒霧の方を見上げている。
「君が見たのは、その娘さんの娘さんだよ。きっと」
「……ああ」
 黒霧はぽろりと相槌を打った。
「それはちょっと、考えつかなかった……」
 お前それでも物書きの端くれかと内心で激しくへこみながらも、ラッシーの推理は続く。
 そんな黒霧を慰めるかのように、ホワイトスノーはしきりに黒霧にすりついた。
「それなら年齢もあうだろう? 貴族に召しとられたというと聞こえはわるいけど、例がないわけじゃない。きっと、あえて不利な結婚をしたんだろうね。お話としてはいい話だよ」
 ラッシーの皮肉めいた口調を聞きながら、黒霧は激しく沈んでいた。
「なるほど…………。…………あ、年齢のこと全然考えてなかった」
 ふと膝の上のホワイトスノーを見下ろすと、ホワイトスノーはまっすぐ黒霧を見上げ、身体をしきりに黒霧にすりつき続けていた。
 黒霧は少し自嘲気味に笑った後、素直にホワイトスノーに「ありがとう」と言って手を伸ばした。ホワイトスノーは黙って黒霧に撫でられていた。
 その様子を見ていたラッシーは少しだけ笑った後、また口を開いた。
「まあ、だとしたら君の恋は実らないだろうね」
「ふむ」
 黒霧はホワイトスノーの頭に手を置いたまま唸った。
「まあそれくらいは、面白いかどうかで考えましょう。僕は小説を書くのが下手です」
 そして、黒霧は次の言葉を少し考えた。
 ラッシーはそれを静かに見守っている。
 ホワイトスノーがまっすぐ黒霧を見上げた時には、黒霧の次の言葉は決まっていた。
「でもまあ、書くまいとしたことはありません。今更一つ二つ無理そうな問題に挑むのは、まあ、悪い気分じゃありません」
 そう。
 ラッシーは窓の外を見た。
 馬車は目的の地……ショッピングモールへと着いたらしい。
「複合施設でね。資金の出所があやしい」
 そう紹介するショッピングモールは、相当大きく見えた。
「……なんと。どんな店があるかはご存知ですか?」
「宝石に衣料、生活雑貨。なんでもあるようだね。子韻星という人物がオーナーだ」
 どこかで聞いた事あるような。
 そう思ったがとりあえず黒霧は黙っておいた。
「ま、いずれはしっぽをつかんでやるさ。おそらくはスパイだ」
 手伝いますから。
 その声に、ラッシーは頷いた。


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 お話というものがある。
 山もあれば谷もある。
 しかし、それとて美しいお話である。
 彼の紡ごうとしているお話は、果たしてどんな色のお話となるのか。
 それはまだ分からない。


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 びーえるってかくのむずかしいなあとおもいました。かけるひとはすごいなあとおもいました。

雹@神聖巫連盟さん依頼SS


 貴方とお茶を


 本日晴天。杏のファームは今日も平和である。
 silver vine。杏のファームに存在するNW中でも有名な喫茶店である。
 看板猫のスピキオがあーんとあくびをしている。
 店長の結城杏は贈答品コーナーの品を並べており、店員の優羽カヲリと四方無畏は掃除をしていた。

 カラン

 スキピオがぴくりと首を動かして鐘の音の方角を見る。
 ドアが開いたのだ。
「あっ、いらっしゃいませー」
 杏は笑顔でお客を出迎える。
 メガネで着物の青年がエスコートしているのは、アンティークドレスを着て眼帯をつけた女性である。
 女性は店をぐるりと見回して口に手を当て微笑んだ。
 店の棚はいつもカヲリと四方が掃除しているので埃一つ積もる事もなく、品もいつも杏が整理しているので綺麗に並んでいる。
「綺麗ですね」
 店を見て女性はにこりと笑った。
「ですねー」
 男性は女性に「こちらへ」と言って席についた。
 男性の顔は赤い。
 オーと無言でカヲリと四方は顔を見合わせた。
 デートである。デートに自分達の店が使われるのはすごいなあと思ったのである。
 その二人の頭上でパンパンと杏が手を叩いた。
「はーい、お客さんのご注文ご注文―。オイラはキッチン行って来るよー」
「了解―」
 かくして、silver vineの喫茶コーナーお客様第1号のおもてなしと相成ったのである。


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「何にしますか?」
 雹は緊張した声でヴァンシスカに尋ねた。
 ヴァンシスカにメニューをぱらりと捲って答えた。
「クッキーと紅茶を」
 ヴァンシスカはすごいなあと雹は素直に思った。彼女は本来フランス革命前後の人なのだから、ここの文化はほとんど異文化と言ってもおかしくない。慣れるのがすごく早いのだ。雹は頭の中で財布と相談した。
 うん。国に支払ってもらうからいい。大丈夫。
 雹はカウンターの方に手を挙げると、店員がやってきた。
「すみません、紅茶二つと、クッキー、ホットケーキを下さい」
 何度もメニューを辿って、店員にそう告げると、すぐにセットが出てきた。
 ほっこりと湯気が出ているのがおいしそうである。
 ヴァンシスカが花がほころんだように笑った。とても嬉しそうである。
「いただきまーす」と言いながら雹ははて、と思ってヴァンシスカを見た。
 ヴァンシスカはうっすらと頬を赤らめた。
「甘いもの、好きなんです」
 彼女はそう言うとクッキーを少しずつ口に入れながら食べ始めた。
 小動物みたいな感じが可愛らしい。
 雹はそんな彼女を見て安心してからシロップを回してかけてからホットケーキを一口大に切って頬張った。
 素朴な店の雰囲気と同じく、ホットケーキもほっとするような味がした。
「おいしいですー」
 思わず声に出すとヴァンシスカがきょとんとした顔でこっちを見てきた。
 雹は少し照れた後、ホットケーキをもう一度一口大に切った。
「ホットケーキちょっと食べますか?」
 フォークで刺してヴァンシスカに見せてみるが、彼女は首を振った。
 うん、やっぱり異文化に慣れつつあっても食習慣まではそう簡単に変わらないか。
「そうですか」
 雹はそう言ってからフォークに刺したホットケーキを口に入れた。
 シロップが少し染み込んでいて甘かった。


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「ふー 今日はいろいろ見て回って疲れました」
 雹はふーっと息を吐いた。
 国にいる間はデートとは程遠い事をしていた。
 国内が極度に人が増えた関係で、治安が悪くなったり物価が上がったりして、少しずつ歪みが生じているのが気になったのである。
 ヴァンシスカと二人、馬に乗って国のあちこちを見て回った。
 国の水質汚染やゴミのポイ捨てなどが起こっているのが悲しい。
 まあいい事もあった。
 藩王の爵位が上がった事で、お金が入るらしいので、これらの問題はおいおい解消される事だろうと言うのが分かった。まあきちんと内政を立てればの話だが。
 デートらしくないデートだったが、ヴァンシスカは雹の横で笑っていた。
 国の見回りが終わった時、彼女はにっこりと笑ってこう言ったのだ。

「お疲れ様でした」

 彼女は雹に少しずつ言葉を教えてもらって、流暢に国の言葉を話せるようになったのである。
 雹は彼女の笑顔で、疲れも癒されたのであった。

 そして今も。
「ゆっくりくつろげるといいですね」
 ヴァンシスカは優雅に笑いながらそう言い、お茶を飲んでいた。
 お茶はほのかに柑橘類の匂いがした。
「お仕事っぽいことばっかりで、つまらなかった とか……?」
 雹はおずおずとお茶を少し口に含みながらヴァンシスカを見た。
 彼女はゆっくりと首を振った。
「いいえ、ちっとも」
 ヴァンシスカはそう言って笑った。
 雹は少し舞い上がり、勢いに任せて紅茶を一気飲みし、火傷をして舌を出した。
 ヴァンシスカは手を口に当てて、クスクス笑った。
 雹も釣られて、笑い出した。
 店に二人のクスクスと言う笑いが溢れた。


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「ありがとうございましたー」
 ドアはカランと言う音と共に閉まった。
「ラブラブだったね」
「うん。ラブラブ」
 店員達は仲良く寄り添って帰っていったお客様を見送ってからこう言った。
「馬でデートってのも新しかったね」
「まあNWだったら色んな人いるけどねえ」
 店員達の囁きを知ってか知らずか、スピキオは再度あーんとあくびをした。
 本日晴天。杏のファームは今日も平和であった。

八守時緒@鍋の国さん依頼SS


 嘘つきと妖精


 少し昔の話になる。
 ある少年がいた。
 その少年には夢があった。
「未来の護り手になりたい」
 それは誰もが笑うおとぎ話。父には聞かせられない話だった。
 彼自身、その話はおとぎ話だと思っていた。
それを話した相手はたった一人だけだった。
「いい夢だ」
 その相手は即答した。その相手の事は今はもう覚えていない。
 少年は素直に感動した。誰もが笑うその話を、笑わずに聞いてくれたこの相手に。
 その今は覚えていない相手との出会いが、少年の運命を大きく変えた。
 彼の歩く道は荒れ果てていても、その空を見上げる星が、彼の歩く道を照らしていた。


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 妖精と言う生き物がいる。
 人の理から大きく離れ、感情のままに電子の海を泳ぐ者。
 妖精には愛した人がいた。
「伝説は言う。世界は闇ではない。 世界は夜だ。夜には星が瞬いている。 小さくもはかないが、 真っ暗じゃない。 俺は星だ。 暗いかも知れないが、 星のひとつであることは間違いない。 …俺がそう決めたから。 一人の人間が全部を賭けて、 それをなすのであれば…、 不可能とやらがどれだけ限定的に なるのかを…。 証明するんだ…俺の手で。」
 彼の言う事全ては嘘だった。
 しかし妖精には分かっていた。
 彼の言った事は嘘だが、嘘ではないと言う事を。
 彼の嘘を本当にできるように、彼が星なら私は彼を見守る空になろう。
 夜空には星が瞬いていた。頼りない星の一つも、夜空は優しく見守っていた。


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 その日、彼女の会った人は、不思議な人だった。
「……泣いてないかい? 不安には、なってないかい?」
 初めて会うとは思えない言葉が、彼の第一声であった。
「大丈夫。自分で何とかするしかないの。…えーと、私今日は対人スキルについて勉強しにきたの」
 彼女はそう答える。
 彼は微笑んでいた。
 舌を見せた。ベロベロと。
 彼女はびっくりして彼を見た。
「自分で何とかするってのは、あまり賢い方法じゃないな。お前の好きな人は、きっとそう思っていた」
 彼女はちらりと好きな人を思い出した。
 嘘つきな人だった。
「だって、そういうのって話を聞いてもらう以外してもらえる事無いじゃない。結局自分で解決する問題だと思うもの」
 彼女は思いついた事をぽそぽそと続けた。
 彼女の話すのを、彼は面白そうに見ていた。
「真面目なんだな」
「真面目じゃないよー。恋愛の話なんか特にそう思うもん。私共感できないの。よくわかんない」
「共感できない? ふむ」
 彼女の言葉をじっと聞く彼。
 彼は歌でも歌いだしそうな位楽しそうな顔をしていた。
「真面目だ。真面目。俺はそんなこと思ったこともない」
「連絡来なくてムカつくとか、毎日会いたいとか思わないもん。2週間くらい音信不通でも放っておいて欲しい」
 彼女は思いのたけをぽそぽそぽそと語る。
 彼はそれをじっと聞いていた。
「いいじゃないか」
 彼のその返事に、彼女はぱちくりした。
 彼女は彼の顔をじっと見た。
「それが、何か問題なのか?」
「うーん。そう言うとね、みんなにそんなの本当に好きじゃないんだよ、って言われるんだよ」
「なぜ?」
 彼の言葉に、彼女は少し唸ってから言葉を搾り出す。
「知らない。みんなは好きだと毎日会いたいとか頻繁に連絡し合いたいと思うんじゃない?」
「さっきから、みんなと言い続けているが、そのみんなって奴は、君のことなのかい?」
「ううん。私以外の人の事。気にするなって言うんでしょ」
「いいや。なぜ?」
「俺が気にするなと言ったら、君は気にしなくなるのか?」
「大抵そう言われるから。言われても気にするよ」
 彼はまた面白そうに笑った。
 彼女は首を傾げた。
「さっきから何か面白いの?」
「何が面白いって、いや。何も。世の中に面白いことなんて、そうあるわけじゃないだろう」
「まあ、そうだよね」


/*/


 それは、不思議な出来事だった。
 彼との対話が、彼女の心に響いた。
 彼の言葉は不思議と彼女の中にストンと入ったのである。
 だから。彼女は彼についていく事に決めた。
 どうせいつ死ぬか分からない身だ。
 もう後悔だけはしたくなかった。


 これから始まるのは、嘘つきと妖精の物語である。
 嘘つきは嘘を本当にするために戦い、妖精はそんな彼を守るためについていくのである。

店企画

◇レンタルショップ四季折々


◆店のコンセプト

季節イベントで使えるアイテムをレンタルサービスする店です。
せっかくの季節イベントがあるからそれを楽しむのをお手伝いできる店をできるだけリーズナブルな値段でできる店をしたいと思いました。また、設定国民に季節イベントを楽しめるように働きかける事で国民感情を穏やかに保てればと思っています。

◆何故レンタルか

1:季節外れのアイテムを所持し続けて、編成時などのアイテム申請欄にイチイチ報告するのが面倒臭いと思うから。
2:買うと値段の張るものもレンタルにする事で安く上げられると考えたから。

◆レンタル期間

基本的に季節イベントが終了したら自動的にレンタル商品を回収します。

例)クリスマス。12/26になったらレンタルアイテムは返品扱いになります。

◆アイテムレンタル延長

要望がございましたらレンタルの期間の延長が可能です。延長期間は最高で一ヶ月。延長料金はレンタル料の四捨五入で1割になります。

◆アイテム保険

レンタルして万が一アイテムが返品できなくなった場合に備え、レンタル1回につき保険代3マイル頂きます。商品が無事返品された場合には保険代は返金致します。レンタル1回につき3マイルですから、同時に商品を2品3品レンタルしても一律料金3マイルになります。

#ひとまずクリスマス向け商品考えた分。Lは店作る許可下りた時に作る

クリスマスツリー(小)(中)(大)(藩国用)
クリスマスリース(家庭用)(藩国用)
電飾(小)(中)(大)(藩国用)
サンタ服(男性用)(女性用)
サンタ服夏仕様(男性用)(女性用)
イブニングドレス
フォーマルスーツ
ベビーシッター
ブーツ型プレゼントケース

#クリスマス用じゃないけどレンタルできる物。Lは後で。

自転車
屋台セット
宴会グッズ
門松(家庭用)(藩国用)
紋付袴
振袖
留袖
鏡餅




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