忍者ブログ記事別アクセス推移 多岐川さんのアイドレス日記: 2008年10月
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2008年10月

  1. 2008/10/31 沢邑勝海@キノウツン藩国さん依頼SS
  2. 2008/10/22 SSっぽい文章の書き方
  3. 2008/10/16 うにょ@海法よけ藩国さん依頼SS
  4. 2008/10/09 また追いかけっこ何故またこうなる
  5. 2008/10/09 佑華と小カトーのこれまでの話
  6. 2008/10/06 ハロウィンSS(ぽいもの)
  7. 2008/10/05 八守時緒@鍋の国さん依頼SS

沢邑勝海@キノウツン藩国さん依頼SS


 例えばこんな恋の話


 タイフーンは珍しそうに窓を覗いていた。
 帝國ではあまり見かけないような建物がたくさん見える。
 少なくとも宰相府藩国と同じ西国人国家って聞いたけどな。これがお国柄と言う奴か。
「キノウツン藩国ってどんな所?」
 横に座る皇子、谷口竜馬に聞いてみる。
「ええ、よい所です。……まあ、変わった風習はありますが」
「変わった風習? 何それ」
「……まあ、着いてみれば分かります。さあ、そろそろ到着しますよ」
 飛行機が下降の体勢に入った。
 そのまま緩やかに着陸、アナウンスが響く。
 谷口に続いて降りようとするタイフーンは、最後に窓をちらりと見た。
 空港は穏やかに見えた。


/*/


 入国審査をしている間もタイフーンはきょろきょろと辺りを見回していた。
 おかしいなあ。
 タイフーンは首を捻った。
 ここは何故かメイドや執事が心なしが多い気がする。
 この国は共和国でもそこそこ大きい国だとは聞いていたけど、主人もいないのにこんなに小間使いが歩いているのは何でなんだろうか。
 この国では平民は小間使いの服を着るのが義務付けられているのだろうか。でもそんな珍妙な法律は聞いた事がないし。
 タイフーンは再度首を捻った後、ようやく入国審査が終わった。
 と。
 終わった途端一人のメイドがこちらに走って来た。
「おかえりなさいませ、キノウツンへ」
 小さなメイドはひらりんとスカートの裾を摘んでお辞儀をした。きれいな挨拶だが、明らかに場違いな気がする。
 タイフーンはきょとんとした顔をした後、谷口を見た。
「皇子、これは?」
 対する谷口は苦笑していた。
「冗談のようなものです」
 小さなメイドはにこにこと笑っている。
「一応この国の挨拶みたいなものです……谷口さん、お久しぶりです。」
「お久しぶりです」
 小さなメイドはにこにこ笑いながら谷口を見上げ、互いに挨拶を交わしている。
 ああ、なるほど。そう言う事か。
 タイフーンが合点行った。
 このメイド、皇子が好きなんだな。
「そちらの方もはじめまして、沢邑勝海と申します」
 メイド改め沢邑勝海は再度ペコリとお辞儀をした。
 どうもこの国のメイドと言う者は、屋敷の中だけでなく、外でも挨拶をする事が慣わしになっているらしい。
 世界は広いなあ。
 少しだけタイフーンは思った後、こちらもペコリと頭を下げた。
「オス。タイフーン」
 もちろんデタラメである。タイフーンはれっきとした女性である。
 沢邑は少しだけびっくりした顔をした後、再度谷口を見上げた。
「誕生日、以来……ですね」
「ははは。あれからずいぶんたちました」
「ええ、凄く長く感じました。それにしても御出世なされましたよね……」
 沢邑は寂しそうに笑った。
 と言うか。
「出世したんだ!」
「するわけないでしょうが」
 タイフーンにあっさり返す谷口。
 沢邑は再度びっくりしたような顔をした。
 うーん。皇子になるだけなら誰でもなれるような気がするが、それを言っても沢邑には分からないかもしれないなあとタイフーンは考えた。
「いやまあ、いろいろありましたが、結論を言えば別にあいかわらずでして」
 谷口は丁寧に沢邑に説明しようとする。
 ふふん。
 タイフーンのいたずら心が刺激された。
「ま、婚約くらいかなあ」

 ………。
 空気が凍った。

『誰の?』
 声がハモる。
 谷口は急に笑顔になった。
 タイフーンはぽいっと捨てられ、そのまま走り去っていった。
「た、谷口さーん!」
 沢邑は慌ててスカートをまくって追いかけていった。
「ててて……あら、冗談が過ぎた?」
 タイフーンは少しひっくり返っていたがすぐ立ち上がって走り去っていった二人を見送った。
 うーん、二人とも真面目だなあ。
 タイフーンは少し体操をした。
「さあて、追いかけますか」
 そのまま走り出した。
 ……いわゆる出歯亀と言う物である。


/*/


 タイフーンが音もなく二人をよく観察できる場所に移動した。
 二人はちょうど空港の中のベンチに座って話をしている所だった。
「……えーと、結婚するんじゃなかったんですか? だれかと」
 沢邑はどんな顔をすればいいのか分からないと言ったような顔をしていた。
 対する谷口はと言うと、きょとんとした顔をしていた。
 うーん皇子、察しなさい。彼女あんなに困った顔をしてるのに。
「婚約はタイフーンの冗談ですが」
「……あー、よかった……」
 沢村は肩をほおっっと思いっきり落とした。少し涙目である。
「まあ、帝國風の冗談は悪趣味ですからね」
「……その、……前の事だから……忘れてるかも知れないですけど、私は貴方の事が好きなんです。愛してます」
 沢邑は肩をふるふる震わせて言う。
 おっ、結構大胆。
 対する谷口は分かってなさそうな顔をしていた。
「共和国にも友人がいることをうれしく思います」
「……だから、そんな冗談は悲しくなります。冗談でも……」
 沢邑はぽろぽろぽろと泣き出しながら谷口にしがみついた。
 おお。
 タイフーンは身を乗り出したいのをこらえて眺めていた。
 そこは肩を抱く所そこは肩を抱く所。うーん、やっぱり皇子は分かってなさそうだなあ。
「……あの後居なくなって必死で捜したんですよ……手紙も出したのに……」
「手紙を送ってくれたのですか……ありがとうございます」
「はい……届いてましたか?」
「いえそれが、中々にして、今の仕事は手紙が多く」
 うーわー。
 ここで何で甘いセリフとか囁かないかなあ。
 タイフーンはしばらく二人を眺めていたが、ここから先は真面目な話だった。
 タイフーンはそそくさと場所を離れていった。


/*/


「皇子、あの人は大事な人?」
 帝國に帰ってからの谷口は、やたら深刻そうな顔で書類束を抱えていた。
 その横にタイフーンが猫のように擦り寄ってきたのである。
「あの人とは?」
「サワムラ」
「ああ」
 谷口は書類束を積みながら返事をした。
「大事な友人です」
「ふうん。と言う事は恋人ではないと」
「それが何か?」
「なら、彼女私が落としていいかな?」
「なっ……」
 谷口がパサパサと書類を落とす。
 慌てて谷口が拾い出すのをタイフーンはまじまじ見ていた。
「ねえ、いいかな?」
「いい訳ないでしょ!! 大体貴方はお……」
「恋愛って性別で決まるんじゃないよね?」
「何言ってるんですか!! 駄目です!! 彼女を弄んで傷付けるようだったら容赦しません!!」
「ふむ。それが本音か」
「……だから何なんですか?」
 書類を拾いながら谷口がタイフーンを睨む。
「まあ、頑張れ」
「だから、本当に一体何なんですか!?」
 谷口の叫び声をタイフーンはしれっと無視して去って行った。

 彼女が帝國に遊びに来るようになったら面白いかもしれないなあ。
 タイフーンは新しいおもちゃを手に入れたようにクフフと笑っていた。
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SSっぽい文章の書き方

 えーっと、文章の書き方講座とかはたくさんありますし、宰相府藩国ページ見に行ったり、本屋さんに行ったりすれば読む事ができますので、今回はSSっぽい文章の書き方の話をしようと思います。

*SSっぽいとは何か

 SSの書き方ではありません。SSは1本の筋の通った話であり、SS1本書く方法だったらまず骨格を作ってそこから肉付け……と言う作業が必要なのでここでは割愛させていただきます。
 例えばHQ作業をしている時。説明文ばかりだったら読み辛いので、そこで砕けた文章が必要になる事があります。
 例えば「Aの魔法陣」のリプレイを書いている時。生ログだけだったらテンポよく進まないので、ログを少し削ぎ落とし、替わりにSSっぽい文章を挿入する事でテンポをよくする作業が必要になる時があります。
 何となくイメージできたでしょうか? 要は説明的ではない、詩的な文章を書く作業の事です。
「えーっ、そんなの書いた事ないよ」と思うかもしれませんが、大丈夫です。
 SS1本書くのだったら結構生みの苦しみを覚えるかもしれませんが、SSっぽい文章でしたら少し訓練すれば書けるようになります。

*まず文を書いてみよう

 まず書かなきゃいけない文を書いてみましょう。
 HQ作業でしたらHQの仕様の文、「Aの魔法陣」リプレイでしたら生ログから必要な文章の抽出ですね。まずは文章書き出してみて、どこにSSっぽい文章が必要か考えてみましょう。読みやすくする作業は必要です。読者の気持ちになって考えてみましょう。
 例えば戦闘機の説明。
「この戦闘機は○○がすごくって、××って武器を装備してて強いんだよ!!」
 と、このように、ひたすらメカメカな説明文をいっぱい書くのも悪くないのですが、これだけだと戦闘機好き以外の人には読んでいても「???」となって分からないですね。
 そこで、この戦闘機を作る事になったいきさつをSSっぽい文で書いてみようと思いつく訳です。
 HQ作業していて、HQ取るにはある程度面白い文が物を言います。SSっぽい文を書くのもその一環になる訳ですね。
 リプレイでしたら、説明文と一緒にごくごく短いSSっぽい文をつけたりすると場面の展開が分かりやすくなって親切です。
 書かなきゃいけない場面を何となく想像できたでしょうか?
 それでは、SSっぽい文を書いてみましょう。

*SSっぽい表現の文を書いてみよう

 例えば、リプレイの間にSSっぽい文を書くとします。
 どう言う描写を書けば親切でしょうか?
 リプレイのログをよく読んで下さい。
 天気は晴れでしょうか? 雨でしょうか?
 大抵のSDは簡潔に天気を教えてくれるはずです。
 では書いてみましょうか。


「その日も雨が降っていた」


 大体SDが書いたものと同じような文ですね。
 このままでももちろん構いませんが、ここで描写を少し細かくしてみましょう。
 その雨はどんな風に降ってるでしょうか?
「しとしと」「ぱらぱら」「ザーザー」などなど。
 少し描写を細かくする事で情景が一気に広がります。
 それでは一つ足してみましょう。


「その日も、ぱらぱらぱらと雨が降っていた」


 こんな風になります。
 ギャグっぽい表現にしたいならわざと土砂降りにしてみてもいいですし、ホラーっぽい表現にしたいなら絶え間なく降り続ける雨を演出してみてもいいでしょう。


「その日も、バケツをひっくり返したような激しい雨が降っていた」
「その日も、しとしとと雨が降り続いていた」


 何となくイメージが変わるでしょう?
 こんな風な文をどんどん書き足していきましょう。
 ちなみにこんな文章をどんどん組み合わせて書いたSSっぽい文がこちらです。

*語彙を広げてみよう

 何となくSSっぽい表現の書き方を分かっていただけたでしょうか?
 表現だけだったらそんなに難しい事考えなくても大丈夫です。
 さっきのように少し表現を変えた文章を積み重ねていけば充分書けます。
「でもそんなに言葉なんてぱっと思い浮かばないよ」と思うかもしれません。
 そこで、語彙が物を言います。
 語彙と言うものはあちこちで拾えます。
 これも訓練で習得できます。
例えばテレビ。何か響きのいい言葉はどこかにメモしておきましょう。手帳でも日記でも、ブログでもmixiでも構いません。
 例えば辞書。どんな言葉を使えばいいか分からなくなった時はどんどん引いてみましょう。辞書は言葉が数珠つながりになっています。それによって同義語や異義語も分かり、自然と語彙は広がります。
 よく文章講座などで「本を読みなさい」と口酸っぱく言っているのは、自分の中だけで生産できる言葉の表現には限界があるので、その都度その都度違う表現を探しなさいと言う意味もあります。ちなみにこれ書いている人間は1週間位文章書き続けたら最低1冊は本を読むようにしています。本だけでなく、人の書いた文をよく読む事。国語の教科書なんかはいろんな著名人の文章に触れられるのでいい勉強になります。新聞のコラムも簡潔な文を書く勉強になりますよ。
 あと文章講座などで「日記を書きなさい」と口酸っぱく言っていますね。これは、文章を書く練習もそうですが、その時の季節の食べ物や花、空の色などが読み返せば分かると言う利点があります。春の園が舞台の文章を書くなら春に書いた日記が、夏の園が舞台の文章を書くなら夏に書いた日記が役に立ちますよ。また何か嬉しい事があったり悲しい事があったりした時に書いた文章を読み返す事で感情の揺らぎを表現できるようになります。日記は結構宝になりますので馬鹿にはできませんよ。

*人に文章を読んでもらおう

 書きあがった文章はとりあえず誰かに読んでもらいましょう。ブログに公開する。人に見せる。投稿してみる。などなど。
 人に見せる事を意識して書けば自然と上達しますよ。これは他の文も同じです。時には駄目出しされる事もあるでしょうが、それは次から気をつければいい訳ですから気に病む事はないです。

*最後に

 SSっぽい文章の書き方を何となくイメージできるようになったでしょうか?
 SSっぽい文章に限らず、文章は書く訓練を続ければちゃんと書けるようになります。
 幸いアイドレスにおいて、SSっぽい文章を書く場面は多々あります(HQ作業、FPH投稿、Aマホリプレイなどなど)。
 どんどん書いてみて、後は自分なりの表現方法を見つけてください。

うにょ@海法よけ藩国さん依頼SS

 言葉とは分かり合うためにあるもの


 亜細亜のその日の任務は、FEGの是空藩王にPPGの密書を届ける事だった。
 亜細亜はあまり共和国の地理には詳しくない。そこでPPGが護衛につけてくれたのはotaponと言う人だった。すごいゲーマーらしくって、ぽち王女のログで何度か彼の事を読んだ事はあるけど、亜細亜はよくは知らない。
 FEGに出向いたものの、肝心の是空藩王は留守だった。聯合国の海法よけ藩国にいるらしい。
 海法よけ藩国か……。
 亜細亜は頭の中で一人の人物を思い浮かべていた。
 友達。だと思う。多分。
 ずっと仲良くしていたけれど、ある日突然「実は男だった」と言われた。
 偏見がないと言えば嘘になる。ただびっくりした。
 その後はちゃんと話していない。
 悪い事したかもしれないなあ……。
 亜細亜はいつも積極的なみらのと違って、友達と仲違いした時どう行動すればいいのかが分からない。
 喧嘩? ではないと思う。でもすれ違っている。すれ違っているのをどう接していいのかが分からなかった。
 でも今は。まずお仕事。
 亜細亜はパンと頬を叩いた。
 ここから先は戦場である。


/*/


 海法よけ藩国は森国である。
 ツン、と樹の焦げた変に甘い匂いがする。
 燃えたのは大分前なのだろうが、燻っているのか未だに煙が昇っていた。
「ひどい……」
 亜細亜は思わず呟いた。
 確かよけ藩国は復興したばかりだったはずなのに、またこんな事になって。
 otaponは黙って亜細亜にマスクを渡した。
「ありがとう……」
 亜細亜はotaponに手渡されたマスクをつけて辺りを見回した。
 生きている人の気配がしない。横たわるのは死んだ人達ばかりだ。また戦争が始まったからどこかに逃げてしまったのだろうか。亜細亜は不安になりotaponの服の袖をぎゅっと掴んだ。
 otaponに亜細亜の不安が伝わったのか、otaponは何も言わずに先を歩いた。
「ダガーマンはここにいるのかな……」
 人は不安になると黙り込むか饒舌になる。
 元々亜細亜は前者だったが、少し人と話せるようになったためか後者に変わった。
「おそらくは。まあここが戦場になってるならいるだろう」
 otaponは素気ないが相槌は打ってくれる。
 亜細亜は少しだけ元気を取り戻して歩いた。


/*/


 しばらく人気のない場所を歩いていた時だった。
 カサッ、と焼けた草を踏む音がした。
 ビクリッ、として亜細亜はotaponの後ろに隠れた。
「亜細亜ちゃん、こんにちは、久しぶりだね」
 知っている感じの声だった。知っているのはもう少し高い声だったけれど。
 亜細亜がotaponの後ろから見たのは、うにょであった。
 前は女の子だったけれど、前に宣言した通り男の人になって立っていた。
「俺の女に何の用だ?」
 otaponの言葉に亜細亜は顔を真っ赤にしてotaponの背中をぽかぽかと叩いた。
 うにょは少し困った顔で二人の顔を交互に見たが、まずはotaponに挨拶をした。
「はじめまして、大事な友達に話したい事があるんだけど、いいかな?」
「度胸には目を見張るものがあるが、まあ、ログアウトしたがいいと思うぞ。そんな用なら」
 otaponは冷たく切ろうとするが、うにょは少しビクッとした顔をしたものの、そのままぽそぽそと話し始めた。
「亜細亜ちゃん、そのままでいいから、聞いて欲しいんだ」
 亜細亜は少しびっくりした顔をしたが、otaponの背から顔を出してうにょを見た。
 うにょは真剣な顔をしている。
「この前は、嫌な思いをさせてごめんなさい」
 うにょが頭を下げた。
「話は以上か?」
「いや、ごめん、もう少しだけ」
 うにょの言葉に、otaponは少し後ろの亜細亜を見た。
 亜細亜は首をこくこく縦に振っているのでそのままうにょの次の言葉を待つ事にした。
「前にも言ったけど、亜細亜ちゃんと、仲良くなりたいって思ってた。でも、その気持ちが凄く空回って、逆に亜細亜ちゃんを傷つけてしまって、本当にごめんなさい」
 うにょが再度頭下げるのを亜細亜はしげしげと見ていた。
 うにょさんが謝る必要はどこにもないのに。
 すれ違っちゃったのは、私のせいなのに。
 亜細亜は真剣にうにょの次の言葉を待った。
「何度も何度も亜細亜ちゃんに嫌な思いをさせてしまってるけど、でも、亜細亜ちゃんと仲よくなりたいって、気持ちは、今でも変わってないです。自分勝手かもしれないけど、もし亜細亜ちゃんが許してくれるなら、もう一度、友達になってもらえませんか?」
 亜細亜は目を大きく見開いた。
 避けていたのはこっちの方だったのに。
 偏見持っていたのはこっちの方だったのに。
 なのに、またうにょさんは優しい事を言ってくれる。
 亜細亜は胸がいっぱいになった。
 女の子の時のうにょと、一緒にいっぱい遊んだ事を思い出した。
 男の人になったうにょも、あの時のままなんだと亜細亜は思った。
 首は自然に縦に振っていた。


/*/


 誰かが言っていた。
 言葉とは伝えるためにあるものだと。
 私はちゃんとうにょさんに気持ちを伝えていただろうか。
 別に姿が変わっても、私達は友達だよと。
 一緒に歩いた時、前に戻れたみたいで嬉しかった。
 また、一緒にいられますように。
 私はそう思った。

また追いかけっこ何故またこうなる

#思う所あり自主発禁にしていましたが元気出たので公開します。ワンパターンと言う言葉が頭を駆け巡りました。



多岐川佑華 :こんばんはー生活ゲームに来ましたー

芝村裕吏さん :またずいぶん早いねえ。記事とイベント選択どうぞ

多岐川佑華 :あっ、すみません

多岐川佑華 :

【予約者の名前】03-00058-01:多岐川佑華:FEG
【実施予定日時】10/6/21:00~22:00
【ゲームの種別】生活ゲーム
【イベントの種別(時間):消費マイル】
 ・1時間:20マイル×1時間
【予約の有無】予約 有り(10マイル)
【召喚ACE】
 ・小カトー・多岐川:個人ACE:0マイル
【参加プレイヤーの食糧消費】3マイル×1人
【合計消費マイル】計33マイル
【参加者:負担するマイル】
 ・03-00058-01:多岐川佑華:-0マイル:入学済

 デートチケット使用します

多岐川佑華 :先にl:通したいんですけどよろしいでしょうか?

芝村裕吏さん :どうぞー

多岐川佑華 :l:多岐川佑華は西国人のウィッグを被っている=側面:多岐川の髪の色がピンクではなくなり小カトーが畏縮する事がなくなる*1

芝村裕吏さん :通った

多岐川佑華 :イベントですが小カトーの家に遊びに行きたいです。色々相談したい事あるので。駄目ならせめて二人でゆっくり話ができておやつ食べれる場所をお願いします

芝村裕吏さん :はい。数分待ってね

多岐川佑華 :はいー

芝村裕吏さん :/*/

芝村裕吏さん :ここは宿舎だよ

多岐川佑華 :

そう言えばもうすぐハロウィンですね


今日の服装と持って来たおやつです

多岐川佑華 :Q:宿舎とはどこのですか?

芝村裕吏さん :A:FEGの軍だね*2

多岐川佑華 :おおー小カトーの宿舎探します

芝村裕吏さん :見つけた。平屋の大きなところだ

多岐川佑華 :r:とりあえずドアノックします

芝村裕吏さん :衛兵がいる。

兵:「どなた?」

多岐川佑華 :「こんにちはー小カトー・多岐川さんに会いに来ました。いますか?」

兵:「ここの書類に名前を書いてくださいね」

多岐川佑華 :「はいー」名前書きます

芝村裕吏さん :すぐにジャージ姿のカトーが出てきた。

多岐川佑華 :「トリックオアトリートー」にこにこしながら小カトーの側に寄って行きます

芝村裕吏さん :ついでにたくさんの見物客がいる。

小カトー:「ハロウィン?」

多岐川佑華 :「おおー、知ってたー。うんハロウィンだから。はい、お土産のカボチャプリン」おみや渡します*3

小カトー:「サンキュー」

芝村裕吏さん :周囲がざわめいた

小カトー:「あー」

小カトー:「どっかいこう」

多岐川佑華 :「うん」

芝村裕吏さん :/*/

芝村裕吏さん :ここは公園だよ。

芝村裕吏さん :さすがにここまではついてこないようだ。

多岐川佑華 :#見せ付けてもよかったのに……

多岐川佑華 :「今日は、ショウ君に相談があって来ました」

小カトー:「なに?」

多岐川佑華 :「えーっと、まず最初」

多岐川佑華 :「今日で大体ショウ君と出会って1周年になります」

小カトー:「げー。そんなにたってたっけ?」

多岐川佑華 :「うん大体そう。だから。名前呼んで下さい」頭下げます

小カトー:「なまえってなんだっけ」

多岐川佑華 :#言ったじゃん、病院で言ったじゃん!!*4

小カトーは笑ってる

多岐川佑華 :「今は多岐川佑華です。ユーカです」恨めしそうな顔しています

小カトー:「知ってるって。じゃあ、ユーカ」

多岐川佑華 :「ふえ、ありがとう」ニコニコニコニコ

多岐川佑華 :「えっと……あともう一つ相談があって」

小カトー:「金ならないよ」*5

多岐川佑華 :「お金自分で出すもん!!」

多岐川佑華 :「ってそうじゃなくって。家売ってるお店再開したし、私も、ショウ君と一緒に住みたいから、家買おうかなあと思って。家買う許可もらいに来ました」

小カトー:「えー。まだはやくない?」

多岐川佑華 :「うーんと。一度私の勘違いとは言えど離れ離れになって不安だったし、連絡取れないのって不便だなあと思ったから。だから家あったらすれ違いになったり離れ離れにならないし、電話あったらショウ君に会いに行けない時でも連絡取れるなあと思ったの」*6

小カトー:「そっか、義体だからな。あー。うん。わかった」*7

多岐川佑華 :「えっ、いいの? 家買うの」

小カトー:「いいよ?」

多岐川佑華 :「ありがとう……」小カトーに引っ付きます

芝村裕吏さん :小カトーは不思議そう

多岐川佑華 :「貧乏だけど頑張る」小カトーに引っ付いています

小カトー:「うん。俺も貧乏!」

多岐川佑華 :「うん、一緒一緒」ニコニコして小カトーに引っ付くの止めます

芝村裕吏さん :小カトーはあれって顔。

小カトー:「どうしたの?」

多岐川佑華 :r:ウィッグ取ってみます*8

芝村裕吏さん :小カトーは遠く離れた。

小カトー:「じゃ!」

多岐川佑華 :#やっぱりか!!

芝村裕吏さん :/*/

多岐川佑華 :「待って!!」追いかけます

芝村裕吏さん :追跡。難易5

多岐川佑華 :Q:今シーズンオフですが、アイドレス着替えられますか?

芝村裕吏さん :A:いいえ

多岐川佑華 :うう……アイドレス着てないのでゼロです

芝村裕吏さん :逃げられた・・・

芝村裕吏さん :どうする?

多岐川佑華 :f:小カトーの髪はピンク色なので西国人国家だと目立つ

多岐川佑華 :これとおりますか?

芝村裕吏さん :通った

多岐川佑華 :#何だろう、前見た光景そのまんま……*9

多岐川佑華 :r:小カトーのピンク頭目指して探します

芝村裕吏さん :修正は3だ。

芝村裕吏さん :差分-2

多岐川佑華 :r:ウィッグつけます

芝村裕吏さん :20%

芝村 :今は30%だね

多岐川佑華 :f:FEGは藩王がたくさんいる国なので政庁城に連絡したら是空情報網に引っかかる

多岐川佑華 :これは通りますか?

芝村 :通った。30%

芝村 :これで60%

多岐川佑華 :ダイス振ります

多岐川佑華 :1d100

芝村 のアドイン "mihaDice" :[mihaDice] 多岐川佑華 : 1d100 -> 52 = 52

芝村 :中間。

芝村 :手がかりはみつけた。

芝村 :目撃情報だ。

多岐川佑華 :Q:どこで見つかったか分かりますか?

芝村 :A:飛行場

多岐川佑華 :r:強制イベント「呼ぶと飛んでくる相方」使います

多岐川佑華 :「ショウ君ごめんー、もうウィッグ外さないからー!!」大声で叫びます

芝村 :ああ。それはもう使われている

多岐川佑華 :Q:えーっとどこでですか?

芝村 :A:さてねえ

芝村 :さて、どうする?

多岐川佑華 :#強制イベント今度開けよう…

多岐川佑華 :r:聞き込みして再度ピンク髪探します。

芝村 :空に飛んでいったそうだ。

多岐川佑華 :#あうー

多岐川佑華 :Q:一人で戦闘機に乗ったんですか? 宰相府藩国か外国かに行ったんですか?*10

芝村 :A:おそらく

多岐川佑華 :「ショウ君ごめんなさいー!!」空に向かって叫んでいます

芝村 :/*/

芝村 :はい。お疲れ様でした。

多岐川佑華 :お疲れ様でしたー(るーるるー)

多岐川佑華 :評価は下がりましたよね……

芝村 :-1-1でした

芝村 :秘宝館は0,0です

芝村 :同じことしないでも・・・*11

多岐川佑華 :髪の毛慣れてほしかったんです。万が一結婚式する事なったらあの髪でしたかったんで……

芝村 :そうねえ

多岐川佑華 :小カトーに謝りたいですけど、あの子手紙読みませんよね

芝村 :絶対読まないね

多岐川佑華 :すみません、枝から生えている「伝言」取るのと、携帯電話買うのと、強制イベント「呼ぶと飛んでくる相方」開けるの

多岐川佑華 :どれが一番効果ありますか?

芝村 :伝言

多岐川佑華 :すみません、伝言開示お願いできますか?*12

芝村 :OK

芝村 :明日でもどうぞ-

多岐川佑華 :はいありがとうございますー

多岐川佑華 :あ、明日無理なんで明後日で大丈夫でしょうか?

芝村 :ええよー

多岐川佑華 :了解しました。ありがとうございますー

芝村 :ではー

多岐川佑華 :ではー


*1:このl:通したのに次の行動で意味のない事をする。ひたすらアホだと思いました。
*2:小カトー今何やってるんだろうと思っていたらFEGの軍人になっていたようです。
*3:絢爛世界の日本。初詣ないけどお年玉と花見とハロウィンはある不思議な世界……。ハロウィン知ってるんだろうかと思ってたけど杞憂だったようです。
*4:小カトーはバレンタイン戦役で一度忘れられ、救出された後に病院行ってもう一度自己紹介しています。何で名前知らないなんて意地悪言うんだ。いじめっ子ー。
*5:そんな事は知ってるよ(笑)。と言うか何で家の話と言うかお金の話すると言うの分かったんだろう……。これがいわゆるシンクロと言う奴なのかな。
*6:一度小カトーが帝國の西方有翼騎士団入っていた時に帝國と共和国で戦争勃発しそうだった上に小カトーの所在が全く分からなくなり、ぐるぐるした挙句に脱藩した所、小カトーはFEG大変そうだったから騎士団辞めてFEG国民になってすれ違ったと言うアホな話がありました。ちなみに脱藩先のたけきの藩国から手紙を送ったけれど全く読んでいなかった事から小カトーの活字嫌いが発覚し、試しにビデオレター送っても見ていなかったので、連絡手段が電話だけだと考えたのでした。
*7:この子第七世界人の事どこまで知ってるんだろう……。言った覚えもないし話した事もないのだけど。
*8:いや、ピンクの髪慣れてもらおうと思っただけだったんですけど……。
*9:「追いかけっこ何故こうなる」と全く同じパターンです。アホです。本当に。
*10:小カトーは貧乏と言っておきながら何故か自家用国民戦闘機を持っています。多分それで逃げたんだろうなあと思います。
*11:全くです。
*12:後日「伝言」開示して謝罪メッセージ送りました。
*13:もうウィッグ外さない。二度と外さないんだからー(泣)。

佑華と小カトーのこれまでの話

金村と小カトーのこれまでの話はコチラ、携帯版はコチラ
金村と小カトーのこれまでの話(2)はコチラ、携帯版はコチラ


*多岐川佑華

文族。瀧川一族のストーカー…おっかけ歴うんねん。性格は無茶苦茶マイナス思考であり、人に蹴られないと前に進めない困った人。タキガワ関わるとぐるぐるぐる症候群勃発して頭悪くなる事3割増。微笑青空取った後も相変わらず頭の悪い行動を繰り返して撃沈している日々。

*小カトー・多岐川

佑華の思い人。佑華とは小学生同士みたいな健全なお付き合いをしている。子供じみていたり大人びたりと色々な面を見せては佑華を尽く翻弄しているが本人には自覚なし。家柄のせいかロボットと飛行機が好き。苦手なものはお母さんで似てるもの見て逃げ出す位苦手。絢爛世界でいろんな知類と接触しているため初対面の人とのコミュニケーションが感動するほどに上手い。


*小カトー西方有翼騎士団に入隊

会いに行ったら西方有翼騎士団の飛行隊に入隊していた。いつぞやに約束していた通り小カトーの操縦する飛行機(戦闘機)に乗せてもらう。

天空の騎士

イラスト:橘@akiharu藩国さん

評価値:+1+1

*各国の状況0527

皇帝騎士団と西方有翼騎士団の会談。皇帝軍がFEG攻めると言うきな臭い噂を聞いて小カトーの現状を聞こうと聞きに行ったら情報規制されて聞けなかった。手紙を送る事もできず、このまま敵同士になるのは嫌と、思わずPLは脱藩してしまう。しかし脱藩した後何故か小カトーはFEGに戻っていた……。連絡つかなかった癖に何故、どうして、と愕然としたまま佑華は撃沈していた。

評価値:変動なし(勝手にPLがぐるぐるしていただけ)

*小カトーと再開

たけきの藩国からどうにかしてFEGにいる小カトーと会おうとあれやこれやしてみて、無事に小カトーと再開。騎士団許可もらって辞めて、大変そうなFEGの手伝いをしていた模様。ちなみに手紙は活字嫌いで読んでいなかったのに泣き、戦闘機開発してたのにも関わらず勝手に買っていたのに泣き。何はともあれ本人は元気そうでよかったと思い直すのであった。

春の園で大粒涙


イラスト:古島三つ実@羅幻王国さん

評価値:+1+1

*ゲーム編制ミス

編制ミスにより、着ていったアイドレスが無効となり、上記の小カトーとの再会がなかった事になりました。ルールをきちんと読んでなかった凡ミスだとPL大反省。

評価値:-1-1(再会がなかった事になった為)

*小カトーの誕生日

小カトーの誕生日にどうにか会おうとするPCに手を差し伸べてくれたのは意外な人だった。意外な人のナイスアシストにより無事小カトーと再会。小カトーはバイトで戦闘機乗りをしていた。何か戦闘機より立場下だと思っていたのだけど意外に大事にされている事を知り嬉しかった。

小カトーの誕生日

イラスト:アポロ・M・シバムラ@玄霧藩国さん

評価値:+1+1

*ターン12

ターン11と12の間の移動フェイズでたけきの藩国からFEGに転藩。これで行き違いが無くなったと思われる。

評価値:+0+0(PCが移動しただけ)

*加藤屋の守り購入

「天空の騎士」派生の「加藤屋の守り」(職業)を購入。その影響でPCの髪の色がピンクに変わった。

評価値:+0+0(PCの髪の色が変わっただけ)

*小カトーの誕生日プレゼント

1月遅れで小カトーの誕生日プレゼントの戦闘機を引き渡そうとしたら、小カトーに逃げられた……。原因はPCの髪がピンク色に変わったから。そこから仲良くゲームの半分を追いかけっこに費やす事に。一応誕生日プレゼントは無事受け取ってもらえたのでよしとする。評価はギリギリ上がった。

追いかけっこ何故こうなる

イラスト:コール・ポー@芥辺境藩国さん


評価値:+1+1

*外伝・共和国環状線旅行

明乃ファンの芹沢の付き添いとしてついていった共和国環状線旅行。ピンク髪を怖がる小カトーに気を使って西国人のウィッグを被っていったら普通に上手くいった。ぐるぐるするPL2人のフォローを小カトーが見事してくれ、正直惚れ直した。ちなみに芹沢が小カトーに贈ったお中元の挨拶文はやはり読んでいなかった様子。

評価値:+0+0(同行者がいたため)


*生活ゲーム1周年

生活ゲームで出会って1周年記念と言う事でいろいろお願いと相談に出かける。当初の目的の名前を呼んでもらうと家買う許可もらうは達成したが、ピンク色の髪に慣れてもらう前に逃げられ、撃沈。戦闘機乗って逃げるほど拒否されたらもうどうしたらいいか分からんよ……。

評価値:-1-1(遺伝子レベルで拒否されました……)


*「加藤屋の守り」派生の「伝言」(イベント)購入

手紙読まないビデオレター見ない電話ない小カトーに謝るため苦肉の策として「伝言」購入。即使用。一応謝れたけどこれでいいのか分からない。

評価値:+0+0(謝っただけ)


何か色々迷走しつつ続きます……。

ハロウィンSS(ぽいもの)

そう言えばもうすぐハロウィンですね

今日のおみや

*カボチャプリン


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 多岐川佑華は日付を見ていた。
「今日で大体1周年かあ」
 何となく感慨深くなっていた。
 今日で、小カトーと出会って大体1年になる。
 まあ最初はどっか行かれた。電波だと思われた。逃げられた。入院させた。挙句の果てに忘れられた。
 まあ色々あったなあと思い出に浸っていた。


 さて、10月と言えばハロウィンである。
 佑華も一応仮装しているが。
「でも多分ゴージャス・タイムズにハロウィンないよねえ」
 色々小カトーと交流していて文化が色々違う事は学習していた。
 でも、まあいっか。
 カボチャプリンを用意した。一緒に食べられたらいいなあとそう思った。


「それに、用件、今日こそ済まさないと」
 佑華、この所小カトーと連絡取れないのが不便に感じて、家買って電話買おうかと考えていたが、何分大きな買い物だから、相談してから買おうと思っていたのだが。
 前回はそれどころではなく、前々回は逃げられてやはり言えずに終わっていた。
「今日こそ……今日こそ……」
 佑華はまたもや、ぐるぐるぐるぐるしていた。

八守時緒@鍋の国さん依頼SS


 スリル・ショック・サスペンス


 八守時緒は、前々から自分の相方、八守創一郎の事を気にしていた。
 普段お仕事どうしているのかとか。
 交流関係はとか。
 休日はまあ、自分が普段遊びに行っている時みたいなんだろうけどなあとは思う。
 気になった。ので、調べてみる事にした。
 ちょっとした探偵ごっこであった。


/*/


「目標捕捉、えーっと……」
 時緒はきょろきょろと辺りを見回した。
 ここは黒麒麟藩国。外国である。
 何か八本脚がいるとか、変な技術がはびこっているとか、色々きな臭い噂の流れている国であった。
 創一郎はのんびりした出で立ちで宇宙船から降りると、歩いていった。
 時緒が後を追う。
 創一郎をジロジロ観察する。
 荷物あんまり持ってないような気がする。武器とかなくって大丈夫なのかなあ……。一応ここ、敵国になるんだよね……。
 時緒は怪訝な顔をしたが、まあ後をついていく。
 きょろきょろしてみる。
 あ、創一郎が女の子を捕まえた。
 もしかして、仕事先の情報屋さん?
 創一郎の笑顔が気になった。すごい笑顔。営業用?
 何とか人ごみにまぎれて近付こうとするが、どうも二人の会話は終わってしまったらしい。
 二人は並んで歩いていってしまった。
 時緒は、慌てて二人の後に続く事にした。


/*/


「あの子は?」
 女の子はショーウィンドーにくいっと顎を上げた。
 ショーウィンドーには、後ろからついてくる時緒の姿が見える。
「ああ、連れだ」
「妬くんじゃないの?」
「そのつもりはない」
「いやねえ。女は世界中の女全員がライバルよ?」
 女の子はクスクス笑う。
 女の子が笑っている間に二人はホテルの中に入った。
 女の子は創一郎の肩をポンと叩いた。
「お仕事大事だろうけど、彼女はもっと大事にしてあげたら? 着いたらサービスしてあげて」
 じゃあね。
 女の子は手を振って去って行った。
 サービス、か。
 創一郎は少し頬をかいた。


/*/


「うわー」
 時緒はホテルを見て驚いた。
 何か綺麗な建物である。お金かかりそう。
 こんなすごい所でお仕事?
 とりあえず客を装いホテルに入る。創一郎がエレベーター使って止まった階を覚えて、自分もそそくさとエレベーターに乗り込む。
 チン。
 と言う音と共に創一郎の降りた階に降りると……。
 創一郎が腕を組んで待っていた。
「わっ!!」
 時緒、思わず声を上げる。
「どうした?」
 創一郎に訊かれ、時緒はあっちこっちに視線を向けた。
「はは…。探偵ごっこー…なんちゃって」
 バレバレですかあと言葉を濁す。
 バレバレだなと創一郎はあっさりと言う。
 時緒は本気でがっかりしているのを創一郎が笑う。
 時緒は釣られて笑った後、気付いた事を言ってみた。
「さっきの女の人は? いいの?」
「ああ。芝居だ。きにするな。笑って協力してくれたよ」
 そっか。てっきり情報屋さんかと思った、と言いながら、内心時緒はほっとした。
 浮気するとは思っていないけど、していたら悲しいだろうなあとは思う。
 そのまま創一郎の周りをうろうろしていたら、創一郎が取ったらしい部屋に着いた。
 ダブルベッドが一つに、テレビが一つ。ベッドの枕側には電話が設置してある。
 新聞は置いていない。情報操作の一環かなと時緒はぼんやり思った。
「さて、情報収集するか。表向きは平和そうだが」
 創一郎はそう言いながらカーテンをシャーと閉めた。
 創一郎は時緒にポンと望遠鏡を渡した。時緒はそれを受け取ってカーテンの隙間から外を見てみる。
 外はさっきまで人ごみがあった割には真っ暗だ。灯火管制が布かれているらしい。
 目を凝らしてよく見てみると、所々には兵力を配置しているようだ。
 兵隊の武装は自分達の国とあまり変わらなさそうである。
「歩兵のは役に立たなさそうだ」
 創一郎がぽつりと言う。
 望遠鏡を覗いている時緒の横でせわしなさそうに調べ物をしている。
「そう? そんなに歩兵に力はいれてないのかな…」
「まあ、地上戦はする気はなさそうだな。黒麒麟は」
 ふうんと創一郎の解説を聞きながら、また思いついた事を言ってみる。
「そういえば、藩王がどこかに隔離されてるかもって聞いたんだけど、町の人達は何も感じてないのかな」
「たぶん、違うな。姿が見えない。ふむ……」
 創一郎が少し考えているのを時緒はきょとんとした顔で見ていた。
「違うのかー…。黒麒麟は医療がすごく発達してるとは聞くんだけど、そういう系なの?」
「戦う気がないんだろう」
「そうなの?」
「常識的だな……まあ、講和するつもりだろうな」
 創一郎の言葉に時緒はほーっと息を吐いた。
「そっか…。それなら願ったりかなったりですね」
 そう言いながら望遠鏡をもう少しだけ覗きこんだ。あと気付いた事は多分なさそうだ。
「問題は、残り6国か……」
 創一郎の言葉に、時緒は少し指で数えた。牙の義勇戦士国家、ファイドオーラ藩国、カリヨン公国、田園藩国、アイオース鳥の歌、ストームブルー藩国……。まだまだ時間がかかりそうだなあと思った。
「テラで天領の人たちを受け入れます、って言ったら講和してくれないかな」
 思ってみた事を言ってみる。
「まあ、できるだろうな」
「どうかな。まあ……」
「テラの情報を操作したり隠蔽したりしてた事を国民の人たちに知らせたら、憎しみも薄まるかな?」
「どうかな。まあ……」
 やる事のなくなった時緒は、じぃっと創一郎を見た。
 創一郎もようやく調べ物が終わったらしい。時緒を見返した。
「キスなら後だ」
「違うもん」
 時緒は少しむくれる。
「これからどうするの?」
「冗談だ。俺がしたかっただけ。これからはそうだな……」
 時緒はじぃっと創一郎を見た。
 創一郎は笑う。
「帰るだけだが、デートでもするか?」
 その言葉に、時緒が反応した。
「うん」
 少し顔が火照る。
 創一郎は笑いながら時緒に貸した望遠鏡を仕舞い込み、手を出した。
「いくか」
「うん」
 こうして、二人はつかの間のデートと洒落込む事となった。


/*/


 二人はいつもより寄り添って歩いていた。
 誰かが尾行しているような気がする。黒麒麟藩国の人達だろうか。
 元々恋人同士の二人だが、より一層ただの恋人同士と見せかける必要があった。
 時緒はどうしようと創一郎の手をぎゅっと握った。
 創一郎が時緒の手を少し引っ張った。
 そのまま街角の暗がりにまで彼女を引っ張る。
 そして。
 創一郎の顔が近付く。
「!!」
 キスされた。
 突然の創一郎の行動に時緒はビクリと身体を震わせる。
 そのまま角度を替えて何度もキスをされる。
 時緒は思わず創一郎にしがみついていた。
「ま、ほっとけ、普通にべたべたしてたらいい。身元は偽装してるから、すぐ調査はとかれるだろう」
 耳元でささやく創一郎の声がくすぐったい。
 内心ドキドキしながら、時緒は尾行している人達に見せ付けるためにするんだなと納得した。
「う、うん。ちょっとびっくりした」
 時緒は創一郎にぎゅーっと抱きついた。
「すまん」
 創一郎が顔を離そうとするのを、時緒が抱き付いて引き寄せた。
「ううん。外でデート久しぶりだしね」
「そうだったか?」
「うん。部屋の中ばっかりだったもん。外は危なかったし、その方が落ち着くからだけど」
「ははは」
 そう他愛ない会話をしている間に、人の気配が消えた。
 ただの恋人同士だと判断したんだろうか。
 時緒は最後にもう一度だけ創一郎にキスをすると、二人で手を繋いでホテルに戻っていった。


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 ホテルに戻ってからの時間は二人だけのものだった。
 時緒は創一郎の心臓の音を聞いていた。
 とろりとろりと眠気が襲ってきた。
「眠っていいぞ」
 耳元でささやく創一郎の声が、いやに甘く聞こえた。

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